精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 肺がん ウイルス 人類観察

自傷的経済抑制の説明:金融経済崩壊のカモフラージュ

World Map by Pablo Picasso (created with Stable Diffusion)

 

以前の記事で西欧や中国の経済抑制政策は避けることは可能なはずなのに故意に行っているように見える、と書いた(世界的な自傷的経済抑制:G7のロシア外貨準備凍結、EUロシア産石油禁輸、上海ロックダウン - 精密医療電脳書)。自傷的経済抑制政策の意図についていろいろ情報を集めたが、なかなか納得のいく説明は発見できなかった(自傷的経済抑制の他の説明 - 精密医療電脳書)。ようやく納得のいく説明を発見したが、それはエドワード・ダウド氏の金融経済崩壊のカモフラージュのため、というものだ。

bonafidr.com

以下、彼の記事を再構成したが、ニュアンスが変化していると思われるので、合わせ元の記事も参照のこと。

 

話は新型コロナウイルスのパンデミックの前にさかのぼる。2019年の末にグローバルな債務不履行により構造的な債務危機が起ころうとしていた。典型的な兆候はFRBが「レポ取引危機」と呼ぶもので、レポ取引の短期金利が急上昇していた(アメリカ金融市場ではレポ取引の利率が急上昇しパニック状態:2008年金融危機以来の上昇 -コラム:米レポ市場混乱の理由、FRBは何が必要か | ロイター)。レポ取引Repurchase agreementは、ディーラーが証券を投資家に貸出(販売)し、その後すぐに、わずかな金利を払い債券を取り戻す(わずかに高い価格で買い戻す)取引のことである。証券貸出あるいは販売により現金を調達し、この資金で金融取引をする。米国のノンバンク大手金融機関(ヘッジファンドや投資銀行)の重要な資金源となっている。2007年から2008年に投資銀行がレポ市場で資金調達が全くできないか、できても高い金利を支払わざるを得なかった「レポ取引危機」は、リーマン・ショックの重要な前兆だった。2019年末の「レポ取引危機」では、FRBが介入しても9月、10月、11月と繰り返し起こっていた。

ところがその数カ月後新型コロナウイルスのパンデミックが起こって、世界的に経済が抑制された。この状況に対応するためFRBを初めとする中央銀行はかってない規模で貨幣を刷りまくった。FRBの通貨供給量は前年比65%増で、FRB史上1年間の通貨供給量増としては過去最大だった。このことによって金融危機は一時的に先延ばしされることになる。

ダウド氏はパンデミックは金融経済崩壊を防ぐため意図的に起こされた、とみている。パンデミック対策としてロックダウンやワクチンパスポートなどの抑圧的政策が行われたが、それは金融システム崩壊後の社会統制をねらったものである。だが、計画立案実行者の予想をこえてワクチンの毒性が強かったため中止せざるを得なかった、という解釈である。

 

2022年になって2020年の大規模通貨供給の効果もなくなり、金融危機が再び進行してきた。実体経済はすでに破綻が進行中だ。現在の欧州と米国におけるインフレは金融危機から人々の目をそらすためにわざと起こしたものだ、というのがダウト氏の解釈である。ウクライナ侵攻はエネルギー供給を遮断しインフレを誘導するための口実にすぎない。さらにウクライナは穀倉地帯で肥料の最大の原産地である。ここでの紛争は欧州に大きな社会混乱を起こすためには最適の場所である。社会混乱は新しい金融システムを導入するための下準備になる。

ダウドは政府と中央銀行のこれまでの失策を隠蔽するためのカモフラージュと考えているが、善意にとれば急激な金融経済崩壊を招くよりは、パンデミックによる経済抑制とウクライナ侵攻によるインフレで社会を慣らしておくことで、ソフト・ランディングを計っている、とも解釈できる。

ウクライナ侵攻に対する米国の対応での最大の問題は、ロシアの金融機関を国際的決済網SWIFTというドル決済システムから排除したことだ。このことによりドルの基軸通貨としての完全性をみずから破壊した。この点についてはブレトン・ウッズ3を提唱しているゾルタン・ポズサーと同意見である(ブレトン・ウッズ3:パンデミック・ウクライナ侵攻後の経済 〜 現物資産に裏付けられた人民元が台頭する - 精密医療電脳書)。

現在実体経済の破綻が進行していて高インフレだが、ドルは高い。ドルとコモディティ(石油、農産物、貴金属など価値が変動しない現物)は通常真逆の値動きをする。ドルが上昇すればコモディティ価格は下落する、ドルが下降すればコモディティ価格は上昇する。ところが今回はドルとコモディティ価格が同時に上昇している。これは歴史上かってなかったことだ。アジア危機が良い例だが、通常一国の経済が破綻するとその国の通貨は下落する。ところが今回の場合、米国の経済状況も悪いが欧州をはじめとする他の国の経済状況はより悪い。為替レートは相対的なものなので、ドルの価値の下落がレートに反映してこない。従ってドルが下落して金融経済が破綻するのではなく、ドル高のまま破綻することになる。

 

なお中国だが、ダウド氏は現在経済破綻の真最中である、という。そう考えると新型コロナウイルス対策も別の見方ができる。中国経済が破綻していてキャッシュと物流の流れが低下しているため、ロックダウンなどの抑圧的政策で需要を抑えている、という見方だ。新型コロナウイルス対策で自傷的に経済抑制しているのではなくて、経済が崩壊しているため社会を統制していることになる:原因と結果が逆だ。上海での食料を各世帯に配布している事例など食料の配給制を思わせる。

日本に関する議論はあまりなかったが、現在の円安は継続する金融緩和によるものだろう。人為的なインフレ導入がないことは、日本経済が中国や欧州より健全なことの証左といえる。

 

以上エドワード・ダウド氏は、これまで調べた諸説のなかで現状を最も矛盾なく現状を説明している。あまりにも真実すぎてツイッターもYouTubeもアカウントを凍結されているようだが。