精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 リキッドバイオプシー 肺がん 乳がん ウイルス

がん 治療薬

葉酸受容体FRαに対する分子標的薬:葉酸薬物複合体と抗体薬物複合体

葉酸はDNAの生合成に必須なビタミンであり、不足すると細胞増殖の盛んな組織に大きな影響を与える。FRαを標的にした抗体薬物複合体Mirvetuximab soravtansine/bevacizumabが進行性卵巣癌を対象にして開発中である。

KRAS阻害剤:AMG510(sotorasib)

ようやくAMG510(一般名 sotorasib)を初めとする実臨床で使用できるKRAS阻害剤が現れた。これらの阻害剤はKRAS G12Cの置換したシステインと阻害剤のジスルフィド結合を利用している。従って他の変異には対応できない。

ROS1融合遺伝子陽性肺癌とその治療薬:クリゾチニブ、ロルラチニブ、エヌトレクチニブ

ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌にはクリゾチニブが用いられてきた。新しい薬剤であるロルラチニブとエヌトレクチニブはクリゾチニブと異なり、中枢神経系への浸透がよい。最新の融合遺伝子のリストも掲載する。

乳癌内分泌療法:抗エストロゲン薬、LH-RHアゴニスト、アロマターゼ阻害剤

ホルモン受容体陽性乳癌はエストロゲン依存して進行する。そのためにエストロゲンの働きを障害する内分泌療法を行う。治療薬には抗エストロゲン薬、LH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤がある。閉経前後で治療法が異なる。

血管新生阻害薬:抗VEGF抗体ベバシズマブ(アバスチン)等

VEGF/VEGFR阻害剤は腫瘍の血管新生を妨害する。代表的な薬剤がベバシズマブ(アバスチン)で転移性大腸癌に化学療法と併用する。他にアフリベルセプト、ラムシルマブ、レゴラフェニブ等がある。眼科領域では滲出型加齢黄斑変性症に用いる。

RET阻害剤:セルペルカチニブ、プラルセチニブ

2020年FDAはRET阻害剤selpercatinibとpralsetinibを承認した。対象疾患はRET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌である。Selpercatinibは肺癌に加えRET遺伝子異常を持つ甲状腺癌も適応である。

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の術後補助療法への応用:オシメルチニブで無病生存期間が顕著に延長する

オシメルチニブによるEGFR変異陽性非小細胞肺癌完全切除後の補助療法で、顕著な無病生存の延長が認められた。これを受けてFDAは同治療法を画期的治療 breakthrough therapy に指定した。

HER2 変異陽性乳癌治療薬:トラスズマブ、ラパチニブ、T-DM1

HER2陽性乳癌は、HER2遺伝子の増幅によりHER2蛋白質の発現が上昇している乳癌である。一次療法はトラスツズマブと化学療法との併用で、二次療法以降は抗体薬物複合体 T-DM1である。他の薬剤にはペルツズマブ 、ラパチニブ、DS-8201aがある。

HER2変異陽性肺癌 治療薬開発:抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate, ADC)と受容体チロシンキナーゼ阻害剤

HER2を標的にした治療は乳癌と胃癌では確立しているが、肺癌では確立した治療薬はない。抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate, ADC)とチロシンキナーゼ阻害剤について初期臨床試験が行われている。

CDK4/6 阻害剤:パルボシクリブ、アベマシクリブ

CDK4/6阻害剤、パルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)は、CDK4/6とサイクリンDの複合体を特異的に阻害し、細胞周期の進行を停止する。ホルモン受容体陽性HER2陰性進行性乳癌に投与するが、抗ホルモン療法と併用する。

PI3K/AKT/mTORC1情報伝達系阻害剤(乳癌):エベロリムス vs alpelisib

アロマターゼ阻害剤治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性転移性乳癌には、PI3K/AKT/mTORC1情報伝達系阻害剤、すなわちmTORC1阻害剤エベロリムスeverolimus あるいはPIK3CA阻害剤 alpelisibが選択できる。

EGFR exon 20 insertion エクソン20挿入 治療薬開発:amivantamab、オシメルチニブ、ポジオチニブ、TAK-788

エクソン20挿入はEGFR変異中約6%である。第一世代及び第二世代EGFR-TKIは効果がないが、新しい抗体薬 amivantamab、オシメルチニブ、ポジオチニブ poziotinib、TAK-788 の可能性が検討されている。

BRAF阻害剤:ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ

BRAF阻害剤ベムラフェニブ(ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(タフィンラー)、エンコラフェニブ(ビラフトビ)はV600E変異陽性腫瘍に用いるが、MEK阻害剤(メラノーマ、非小細胞肺癌)あるいは抗EGFR抗体(大腸癌)を併用する。

PARP阻害剤 : オラパリブ等 〜 DNA損傷修復機構を阻害する分子標的薬

PARP阻害剤は、DNA損傷修復機構を阻害する分子標的薬である。国内ではオラパリブ(リンパーザ)のみだが、米国では他にルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブが承認されており、卵巣癌、乳癌、前立腺癌に対して適応がある。

MET阻害剤:テポチニブ、カプマチニブ

2020年になってMET阻害剤が初めて2020年になってMET阻害剤テポチニブ(商品名:テプミトコ)とカプマチニブ(タブレクタ)が承認された。いずれもMETエクソン14スキッピング陽性の進行性非小細胞肺癌が対象疾患である。対象患者の頻度は3−4%と…