精密医療電脳書

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がん 治療薬

抗体薬物複合体 Antibody Drug Conjugate 〜 肺癌関係 ASCO2023

抗体薬物複合体 Antibody Drug Conjugate は、この2−3年急速に市場に現れてきた新しいタイプの抗がん剤だ。日本にとって重要なのは、第一三共が高い技術を持っている点で、トラスズマブ デルクステカンも第一三共により開発された。

KRAS阻害剤 ASCO2023

KRAS G12C阻害剤は、TKIと比較すると現時点では効果はほどほどだが、化学療法との併用や新規薬剤など新しい可能性を示唆する研究が現れている。

非小細胞肺癌の術前術後補助療法:ペンブロリズマブとオシメルチニブ(ASCO 2023)

ペンブロリズマブの術前補助療法への使用は有効だが、オシメルチニブの方は効果が少ない。大規模試験の結果が待たれる。

トラスツズマブ デルクステカンはHER2低発現乳癌にも効果がある

トラスツズマブ デルクステカンはHER2低発現乳癌にも効果があるので、肺癌についてもHER2変異の有無にかかわらず、この薬剤は奏功するのではないか。この場合トラスツズマブはデリバリーにのみ用いることになる。

ALK融合遺伝子陽性肺癌 ~ 融合遺伝子タイプと治療薬

ALK陽性肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)の一種で、ALK遺伝子が他の遺伝子(多くはEML4)と融合することにより、肺細胞の異常な増殖と挙動を引き起こすことで発症します。ALK陽性肺がんは、肺がん全体の約5%を占め、若い患者さんに多く、約半数が50歳以前…

トラスツズマブ デルクステカンのHER2変異陽性非小細胞肺癌への効果

トラスツズマブ デルクステカンTrastuzumab Deruxtecan(旧名 T-Dxd、開発コード:DS-8201)はトラスズマブとトポイソメラーゼI阻害剤デルクステカンの複合体であり、デルクステカンは細胞内で細胞死を引き起こす(抗体薬物複合体(antibody drug conjugate,…

ドライバー変異のない非小細胞肺癌のASCO診療ガイドライン - 2022年版

ドライバー変異のない非小細胞肺癌のASCO - Ontario Health (Cancer Care Ontario) の診療ガイドラインの最新版が米国臨床腫瘍学雑誌に掲載された。

Trop-2を標的にした抗体薬物複合体 sacituzumab govitecan

Trop-2(別名Tumor-associated calcium signal transducer 2, TACSTD2)はEpCAMと類似した構造をとる膜タンパク質であるが、生体内での機能はよくわかっていない。高発現が複数の癌腫で予後不良と相関していることから、分子標的薬が開発されている。本稿で…

免疫チェックポイント阻害剤と免疫系分子標的薬の併用:デュルバルマブ+オレクルマブ/モナリズマブ

COAST第II相試験は、デュルバルマブdurvalumabとオレクルマブoleclumabあるいはモナリズマブmonalizumab併用とデュルバルマブ単剤の比較で、併用療法の優位が示唆された。

非小細胞肺癌術後補助療法での免疫チェックポイント阻害剤アテゾリズマブの効果

アテゾリズマブは術後補助療法において明らかに無病生存期間の延長する。とくにPDL-1 50%以上の患者で奏効率が高い。EGFR変異の有無は影響なさそうだ。

葉酸受容体FRαに対する分子標的薬:葉酸薬物複合体と抗体薬物複合体

葉酸はDNAの生合成に必須なビタミンであり、不足すると細胞増殖の盛んな組織に大きな影響を与える。FRαを標的にした抗体薬物複合体Mirvetuximab soravtansine/bevacizumabが進行性卵巣癌を対象にして開発中である。

KRAS阻害剤:AMG510(sotorasib)

ようやくAMG510(一般名 sotorasib)を初めとする実臨床で使用できるKRAS阻害剤が現れた。これらの阻害剤はKRAS G12Cの置換したシステインと阻害剤のジスルフィド結合を利用している。従って他の変異には対応できない。

ROS1融合遺伝子陽性肺癌とその治療薬:クリゾチニブ、ロルラチニブ、エヌトレクチニブ

ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌にはクリゾチニブが用いられてきた。新しい薬剤であるロルラチニブとエヌトレクチニブはクリゾチニブと異なり、中枢神経系への浸透がよい。最新の融合遺伝子のリストも掲載する。

乳癌内分泌療法:抗エストロゲン薬、LH-RHアゴニスト、アロマターゼ阻害剤

ホルモン受容体陽性乳癌はエストロゲン依存して進行する。そのためにエストロゲンの働きを障害する内分泌療法を行う。治療薬には抗エストロゲン薬、LH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤がある。閉経前後で治療法が異なる。

血管新生阻害薬:抗VEGF抗体ベバシズマブ(アバスチン)等

VEGF/VEGFR阻害剤は腫瘍の血管新生を妨害する。代表的な薬剤がベバシズマブ(アバスチン)で転移性大腸癌に化学療法と併用する。他にアフリベルセプト、ラムシルマブ、レゴラフェニブ等がある。眼科領域では滲出型加齢黄斑変性症に用いる。

RET阻害剤:セルペルカチニブ、プラルセチニブ

2020年FDAはRET阻害剤selpercatinibとpralsetinibを承認した。対象疾患はRET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌である。Selpercatinibは肺癌に加えRET遺伝子異常を持つ甲状腺癌も適応である。

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の術後補助療法への応用:オシメルチニブで無病生存期間が顕著に延長する

オシメルチニブによるEGFR変異陽性非小細胞肺癌完全切除後の補助療法で、顕著な無病生存の延長が認められた。これを受けてFDAは同治療法を画期的治療 breakthrough therapy に指定した。

HER2 変異陽性乳癌治療薬:トラスズマブ、ラパチニブ、T-DM1

HER2陽性乳癌は、HER2遺伝子の増幅によりHER2蛋白質の発現が上昇している乳癌である。一次療法はトラスツズマブと化学療法との併用で、二次療法以降は抗体薬物複合体 T-DM1である。他の薬剤にはペルツズマブ 、ラパチニブ、DS-8201aがある。

HER2変異陽性肺癌 治療薬開発:抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate, ADC)と受容体チロシンキナーゼ阻害剤

HER2を標的にした治療は乳癌と胃癌では確立しているが、肺癌では確立した治療薬はない。抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate, ADC)とチロシンキナーゼ阻害剤について初期臨床試験が行われている。

CDK4/6 阻害剤:パルボシクリブ、アベマシクリブ

CDK4/6阻害剤、パルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)は、CDK4/6とサイクリンDの複合体を特異的に阻害し、細胞周期の進行を停止する。ホルモン受容体陽性HER2陰性進行性乳癌に投与するが、抗ホルモン療法と併用する。

PI3K/AKT/mTORC1情報伝達系阻害剤(乳癌):エベロリムス vs alpelisib

アロマターゼ阻害剤治療歴のあるエストロゲン受容体陽性HER2陰性転移性乳癌には、PI3K/AKT/mTORC1情報伝達系阻害剤、すなわちmTORC1阻害剤エベロリムスeverolimus あるいはPIK3CA阻害剤 alpelisibが選択できる。

EGFR exon 20 insertion エクソン20挿入 治療薬開発:amivantamab、オシメルチニブ、ポジオチニブ、TAK-788

エクソン20挿入はEGFR変異中約6%である。第一世代及び第二世代EGFR-TKIは効果がないが、新しい抗体薬 amivantamab、オシメルチニブ、ポジオチニブ poziotinib、TAK-788 の可能性が検討されている。

BRAF阻害剤:ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ

BRAF阻害剤ベムラフェニブ(ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(タフィンラー)、エンコラフェニブ(ビラフトビ)はV600E変異陽性腫瘍に用いるが、MEK阻害剤(メラノーマ、非小細胞肺癌)あるいは抗EGFR抗体(大腸癌)を併用する。

PARP阻害剤 : オラパリブ等 〜 DNA損傷修復機構を阻害する分子標的薬

PARP阻害剤は、DNA損傷修復機構を阻害する分子標的薬である。国内ではオラパリブ(リンパーザ)のみだが、米国では他にルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブが承認されており、卵巣癌、乳癌、前立腺癌に対して適応がある。

MET阻害剤:テポチニブ、カプマチニブ

2020年になってMET阻害剤が初めて2020年になってMET阻害剤テポチニブ(商品名:テプミトコ)とカプマチニブ(タブレクタ)が承認された。いずれもMETエクソン14スキッピング陽性の進行性非小細胞肺癌が対象疾患である。対象患者の頻度は3−4%と…