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中東からみた脱ドル化とBRICSの台頭 〜 国際金融資本の長期的計画である


新型ウイルスのパンデミック後、メディアを通して入る情報には多くの奇妙な食い違いがあり、この情報の食い違いから世の中の実態を探ることは、パズルを解くようだ。根底にあるのは経済なので、マクロ経済を特に重要視して観察してきた。

 

マクロ経済動向の中でも、重要なのは基軸通貨としてのドルだ。ドルが経済的価値の基準なので、その価値が毀損するとどうなるのか予想もつかない。バイデン政権によるロシアの外貨準備凍結は、米国がいかなる国のドル資産でも略奪できることを示したもので、基軸通貨としての価値を大きく毀損する行為だった。BRICSを始めG7以外の国がドル以外の通貨の可能性を探る直接的なきっかけになっている。

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これまで2年ほど通貨制度の動きについてずっと観察してきた(ロシア経済制裁によるドル基軸通貨制の崩壊世界的な自傷的経済抑制:G7のロシア外貨準備凍結、EUロシア産石油禁輸、上海ロックダウンブレトン・ウッズ3:パンデミック・ウクライナ侵攻後の経済 〜 現物資産に裏付けられた人民元が台頭するBRICSの台頭とドル基軸通貨制の崩壊ドル基軸通貨制へのペトロダラーシステムの関与:perplexity aiを使った情報収集いろいろな国がドル基軸通貨を避けたい理由:ヘッジファンドによる国家通貨への攻撃を防ぎたい)。

バイデン政権によるロシア外貨準備凍結後、ドルの凋落を予測した人は多く、BRICSを中心にドル離脱の協議が行われている。しかしドル離れに対する米国側の介入はないようだ。そもそもバイデン政権のロシアの外貨準備凍結が円滑に行われた点が奇妙だ。米国ではsuper PACという無制限の政治献金が認められており、当然ウォールストリートは大量の政治献金を現政権に行っているはずだ。他国の外貨準備凍結は基軸通貨の前提を壊すアクションなのにも関わらず、なぜ金融業界は反対しなかったのか。ロシアの外貨準備凍結から、BRICSを中心としたドル離れ、BRICSの拡大への流れが妙にスムーズなのが不思議だった。

 

Shahid BolsenはMiddle Nation Channelの創設者で、このチャンネルを通して情報発信を行っている。彼の発信からイスラムの世界情勢の見方がわかる。

Shahid Bolsen(ShortShort News on X: "世界経済の西側からBRICSへのシフトは、グローバル金融資本の所有者・支配者の計画)によると、

1.BRICSはもともとゴールドマン・サックスのジム・オニールが2001年提唱したものである。

2.国際金融資本にとって、グローバリゼーションを維持するには、米国はあまりにも暴力的であり、また人口動態から見ても将来人口が上回るBRICSが経済の中心になる、と予測した。BRICSという概念は、グローバライゼーションを維持するためには欧米中心主義から脱却しなければならない、という国際金融資本の信念から生まれたものだ。

3.現在の脱ドル化及びBRICSの拡大は国際金融資本の長期計画の結果で、20年以上の年月をかけて準備されたものだ。そのため国際金融ビジネスの中心人物達はドル離れを問題視していない。

4.欧米中心主義から脱却及び多極化は、論理的で資本主義的に自然な移行であり、人口動態の傾向と、西側諸国が国家権力を凌駕する民間部門の並列権力構造の発展を許した結果だ。

これまで様々な分析を見てきたが、この議論が最も現状をすっきり説明している、と感心した。従来のグローバライゼーションは、あくまで経済の中心は欧米で、欧米の経済のための周辺市場と生産拠点の開拓だった。これからは、経済に中心はなく全世界の経済がフラットになる、ということだ。特に重要な点は「多極化は論理的で資本主義的に自然な移行」で、逆行する努力は成功しない。気候変動対策は、気候変動の原因を科学的根拠もなく二酸化炭素と決めつけ、仮想的経済成長分野をつくって先進国の経済成長を維持しようとする従来のグローバライゼーションのプランだ。多極化に逆行する計画のため、ウクライナ侵攻によるエネルギー危機がなくとも、いずれ行き詰まっていただろう。EVも同様の仮想的経済成長分野だ。多極化した世界では、インド、アフリカ、南米の自動車市場の比重が大きくなる:EVのインフラ整備、電池原料の調達などを考えると EVが非現実的であることは、素人でも予想がつく。

 

中東諸国については、次のように述べている。

「10年ほど前からブラックロックを始めとする国際金融資本はBRICS以外の新興国、特にサウジアラビア、カタール、UAEへの投資を推進しているが、これらの国は国際金融資本と相談して、そのプランに従って自分たちの計画を立てている。サウジアラビアのサルマン王子は、サウジアラビアを新しいヨーロッパにする、と言っているが、ゴールドマン・サックスやブラックロックと協議の上でのことだ。」

現在サウジアラビアは米国の軍事支援を断り、ロシア、中国、イランへ接近中だ。ペトロダラーシステムは、米国がサウジアラビアを軍事的に支援するかわりに原油取引をドルに限定するというものだ。一見ペトロダラーシステムの前提が崩れているように見えるが、特に米国側から反対はない。サダム・フセインが原油取引をユーロ建てにしようとしてイラク戦争が起こったこととは対照的だ。私見だが、ドルの価値に急激な変化が起こらないように国際金融資本とサウジアラビアとのあいだで手打ちができていてるのではないか。次のYouTubeは日本のトレーダーの見解だが、ウォール・ストリートの標準的見解だろう。

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Shahid Bolsenのヨーロッパに対する見方は痛烈だ。

「現在のドイツの脱工業化の現状から、国際金融資本はすでにヨーロッパを見捨てている:国際金融資本は世界経済の将来に於いて大きな可能性を持っていない、すなわち収益性を見込めない、と考えている。冷酷で厳しい現実は、国際金融資本は欧米から誕生したにも関わらず、欧州と西欧の人々は不要な存在である、と決めることができる点だ。」

この点には異論があって、ドイツの不況はユーロというシステムに原因がある、と私は考えている。欧州経済は恒常的にドイツのみが黒字、他の国が赤字であり、ドイツに資産が集中する一方、他の国には負債が蓄積する。そして欧州の金融システムにデフォルトが起こるたびに(ギリシャの国家としてのデフォルトやクレディ・スイスの破綻など)たびにドイツの資産が消失、結果的に欧州全体の負債が増加する。元凶は、経済は欧州全体単一だが、行政は各国単位というユーロというシステムで、ユーロが存続する限り解決しない。国際金融資本のターゲットはユーロで、ユーロが崩壊すれば、また方向性が変わるのではないか、と考えている。しかしユーロ崩壊はだいぶ先の話なので、現時点では「欧州と西欧の人々は不要な存在」とみなしているのかもしれない。