精密医療電脳書

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研究開発の現状:EGFRリキッド、肺がんコンパクトパネル

自身の現在の研究テーマ、EGFRリキッドと肺がんコンパクトパネルの研究開発の現状についてまとめた。

 

EGFRリキッド

EGFRリキッドは、国産初のリキッドバイオプシー検査システムで、肺がん患者のための治療薬 EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の適応患者決定に用いる。2020年7月31日に承認された。

precision-medicine.jp

2021年5月21日に「EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア」の一部機能(未固定組織を検体とする検査)について保険収載された。2021年8月1日にはリキッドバイオプシー部分(血漿を検体とする検査)についても保険収載された。

 

肺がんコンパクトパネル

肺がんコンパクトパネルは肺がんを対象とした分子標的薬の適応判断の補助である遺伝子診断(コンパニオン診断)のための検査システムである。DNA診断モデュールと2つのRNA診断モデュール、そして研究モデュールから構成されている(図1)。

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図1.肺がんコンパクトパネルの構成。

現行の遺伝子検査パネル(ゲノムプロファイリング用のFoundation One CDxと肺がんコンパニオン診断用のオンコマインDx Target TestマルチCDxシステムが代表的)は、研究用のパネルをもとに作られている。研究用の採取された検体を前提としているため、現実世界の臨床検体にとっては問題が多い。日本の肺がん医療で問題になっているのは、腫瘍細胞含有率である。腫瘍細胞含有率を病理医が調べて低い検体は検査対象から除外しなければならない。

遺伝子検査は解析技術を精密化すれば、ほとんどの臨床検体に対応させることができる。肺がんコンパクトパネルでは、感度頑強性拡張性の3つのポイントに留意して設計した。

感度 Sensitivity

腫瘍細胞含有率のよる制限を初め、遺伝子検査パネルの臨床上の問題は、変異検出の感度を上げることで解決できる。

頑強性 Robustness

最近の臨床検体ではあまり問題は起きないが、長時間検体放置やホルマリン過固定により核酸が分解するケースが想定される。対応するために少々分解されたDNA, RNAでも変異検出できるように設計した。

拡張性 Extensibility

新しい抗がん剤が現れた場合パネルを更新する必要がある。それまで承認されたパネル部分を無駄にしないようにモデュール方式を考案した。モデュールの更新、置換、追加で新しい抗癌剤のコンパニオン診断に対応できる。

肺がんコンパクトパネル開発は現在順調であり、2021年初秋には厚生労働省へ申請予定である。