肺がんコンパクトパネル(正式名称 肺がん コンパクトパネルⓇ Dx マルチコンパニオン診断システム)が2023年2月13日に保険適用になり、検査サービスが開始されることになった。
「肺がん コンパクトパネルⓇ Dxマルチコンパニオン診断システム」(医療機器プログラム)保険適用ならびに検査開始のお知らせ | 株式会社DNAチップ研究所
保険区分と点数:
D004-2 悪性腫瘍組織検査
1 悪性腫瘍遺伝子検査
EGFR遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査、ALK融合遺伝子検査については、
イ 処理が容易なもの 3項目 6,000点
MET ex14遺伝子検査については、
ロ 処理が複雑なもの 5,000点
合計11,000点
肺がんコンパクトパネルは、現在単一遺伝子検査、すなわちコバスEGFR変異検出キット、を使っている施設から浸透していくのではないか、と予測している。オンコマインは検査成功のための病理学的基準が厳しく、検体提出が困難な施設が多い。昨年末の肺癌学会学術総会で検査会社(SRL)の統計が紹介されており、すでにオンコマインとコバスの検査数は逆転し、オンコマインの方が多くなっているものの、コバスの検査数も未だかなり多い。月あたりのオンコマインの検査数は約1500ということなので、コバスは1000から1300程度だろう。肺がんコンパクトパネルはコバスと同じ検体採取手技で検査可能で、EGFR以外3つの遺伝子の変異情報が得られる。積極的な移行が期待できる。
肺がんコンパクトパネルの承認については、下記ページ参照。
precision-medicine.jp
以前肺がんコンパクトパネルのメリットについて質問があったので(多分株式会社DNAチップ研究所に投資している方)、その返答を再掲しておく。
パネルのカスタマーは医師ですので、まず医師がどのようにして肺癌生検検体を採取しているか、を知る必要があります。大別して2つの方法があり、一つはFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)です。この方法は採取した組織をホルマリンにつけて固定しパラフィンに埋め込みます。遺伝子を分解する酵素が変性するので、以降遺伝子の劣化は停止しますが、ホルマリン固定のときに遺伝子が損傷する可能性があります。そして遺伝子検査に検体を提出するまで数日かかります。もう一つの方法は細胞診です。細胞診は検査のその場で病理診断を行います。この場合、遺伝子検査は気管支鏡検査に用いた鉗子等の洗浄液、すなわち検査の余剰物でも可能です。オンコマインは癌細胞の含有率を調べるためFFPEしか使えず、そのため2022年の4月から検査会社は細胞診検体の受付を停止しています。
細胞診検体は医師にとって簡便で、遺伝子の劣化もないので遺伝子解析の観点からも理想的な検体なのですが、遺伝子の劣化を防ぐために冷凍保存しなければなりません。すべての医療施設に冷凍庫があるわけではなく、この点が細胞診検体の大きな問題点でした。
私が開発したのは、コンパクトパネルだけではなくGM管を含む包括的な遺伝子検査システムです。GM管では室温で遺伝子の劣化なく細胞診検体を保存できます。そのため冷凍庫のある医療機関だけでなく、すべての医療機関で細胞診検体がつかえるようになります。人間は楽な方向にながれるもので、忙しい呼吸器内科医も例外ではありません。簡単で迅速な細胞診検体で可能なのに、わざわざFFPE検体を提出するでしょうか。コンパクトパネルを使った先生の中には「もはや手放せない」と言っている人がいます。
TATの問題は、FFPE検体にかかる時間の分コンパクトパネルが有利になり、また検査会社の運用法で違ってくるので、問題にはしていません。以上の理由でAmoyもOPAも競合相手とは考えていません。というか、もともとAmoyやサーモフィッシャーの欠点を払拭するようにつくっておいたので。