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新型コロナウイルス 〜 死亡統計と開発者によるワクチン批判

新型コロナウイルスが再び大きな問題になってきている。ワクチンの存在など昨年とは大きく状況が変わっているので、事実に基づいて説明したい。欧米と日本では死亡統計が大きく異なるので、必然的にワクチンの取扱も同じにはならない。

 

死亡統計

厚生労働省が22日に発表した人口動態統計速報によると、20年に死亡したのは138万4544人で、前年より9373人(0.7%)減った。速報に死因別のデータはない。9月分まで発表している死因別の死亡数(概数)では、前年同期より最も減少したのは呼吸器系疾患で約1万6千人減っていた。内訳は新型コロナ以外の肺炎が約1万2千人、インフルエンザが約2千人であった(新型コロナ: 年間死亡数11年ぶり減 コロナ対策で感染症激減: 日本経済新聞)。

超過死亡(あるいは過少死亡)は実測死亡数と過去のデータから推定した死亡数の差である。新型コロナウイルスが原因で死亡した人の中には、新型コロナウイルスに感染しなくても別の原因で死亡する人がいるので、死亡数ではなく超過死亡でウイルスの影響を評価する。2020年1−11月期のデータが公表されており(我が国におけるすべての死因を含む超過死亡の推定(2020年11月までのデータ分析))どちらも例年と大きく変わらない。日本では超過死亡は認められない。包括的なデータは「日本の超過および過少死亡数ダッシュボード」で公開されている。

exdeaths-japan.org

欧米では大きく状況が異なる。米国では超過死亡は21万7900人で新型コロナによる超過死亡は17万3300人(約8割)(COVID-19関連超過死亡の日米比較)、そして英国では8万5000人で超過率14%は第二次世界大戦後最大であった(イギリスの昨年の超過死亡、第2次大戦以降で最大に 新型ウイルスが原因 - BBCニュース)。公衆衛生学的には、超過死亡が「ない」日本と欧米とでは全く違う病気と考えたほうが良い。

 

新型コロナウイルスワクチン批判

現在米国欧州日本で使用されている、あるいは接種予定のワクチンは行政当局が承認したワクチンではない。あくまでも緊急使用許可(emergency use authorization, EUA)であって承認ではない。すなわちまだ臨床試験段階で、最終的な効果と副作用の評価は終わっていない。とくに長期予後が不明な点には注意する必要がある。

ギアート・バイデン・ボッシュGoert Vanden Bosche博士は、グラクソ・スミスクラインのアジュバントとデリバリーシステム開発部門のトップ、ノバルティスワクチン部門のトップを務めてきたワクチン開発のトップ・エキスパートの一人である。彼はLinkedIn(業界向けのSNS)で同業者へワクチン接種を直ちに中止するように呼びかけた。バイデン・ボッシュ博士の仮説は次のようなものである:現在のワクチンは効果が強すぎて、ワクチンの対象としているウイルスに対する免疫記憶が強く残ってしまう。そのため変異したウイルスに感染したときに現在の新型コロナウイルスに対する免疫が強く誘導され、新しい変異ウイルスに対する免疫は抑制されて重症化してしまう。極端な例では風邪のコロナウイルスにかかっても免疫が誘導されず重症化する、ということだ。

バイデン・ボッシュ博士のインタビュー:

rumble.com

バイデン・ボッシュ博士の仮説が正しければ、変異ウイルスごとに新しいワクチンが必要になる。ファイザーもモデルナもバイデン・ボッシュ博士と同じように考えているのかどうかはわからないが、すでに変異ウイルスに対するワクチン開発を始めている(モデルナの論文:Preliminary Analysis of Safety and Immunogenicity of a SARS-CoV-2 Variant Vaccine Booster | medRxiv)。これらの企業は変異ウイルスに対するワクチンを通常の臨床試験なしに行政当局の使用許可を得ようと計画しており、この点を元ファイザー副社長のマイケル・イードン Michael Yeadon博士は強く批判している。

なお、これまでに出現している主な変異ウイルスに対しては現在のファイザー社ワクチンは効果がある(Effectiveness of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine against the B.1.1.7 and B.1.351 Variants)。

 

分析

カリフォルニア大学、カリフォルニア州立大学で学生、職員とも全員ワクチン接種が義務付けられた。またハーバード大学はワクチン接種者以外入構禁止である。研究室のある奈良先端科学技術大学院大学は原則対面講義なので、これらの処置を非常に厳しいと感じた。しかし、米国の超過死亡統計を見ていると集団に対して何らかの処置が必要なレベルなので、これらの大学の対応も止むを得ない面がある。

潜在的危険性の予想がある以上、ワクチン使用は超過死亡とワクチンの潜在的危険性との兼ね合いで決めるべきだ。欧米の場合は超過死亡が緊急案件なので、集団接種で免疫を持った人を増やして感染者数を減らすことに意義がある。しかし日本は超過死亡がないので、ワクチンの潜在的危険性を考慮するべきだ。感染防御目的で希望する個人に接種するのが妥当な線だろう。ワクチン接種の優先順位が医療従事者から老人に変更されたのは評価できる。

 

追記(2021年5月24日);変異株に対するファイザーワクチンの成績をまとめ、見解を追加した。

precision-medicine.jp