精密医療電脳書

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超過死亡とワクチン死亡報告

現在日本を含めいろいろな国で超過死亡が観察されている。ツイッターを見ているとワクチン推進派は投稿数が激減し、ワクチン反対派は以前活発に投稿を続けている。ワクチン反対派の論拠の一つは超過死亡だ。超過死亡はワクチンの副反応である、という主張である。過激な論調が多いが、穏やかな主張がアゴラに掲載されていた。

agora-web.jp

この論説の主要点は、

1)累積超過死亡数は累積コロナ死亡数を大きく越えている。新型コロナウイルス感染症だけでは超過死亡の説明がつかない。

2)3回接種及び4回接種開始時期と超過死亡発生時期の間の間隔は両者とも10週で同じである。ワクチン接種と超過死亡増加の間隔に再現性があるので、ワクチンが疑わしい。

1)のポイントはそのとおりだが、2)についてはたまたま1度10週で同じだっただけ、と言われればそれまでで、主張は弱い。

 

早速反論が、この論説のコメント欄で引用されていた。

note.com

この論説ではワクチン接種前の2020年秋から超過死亡の増加傾向がかった、そのためアゴラの論説の主張はあやまり、といっている。これも特に強力なエビデンスではないが、これとは別に先進国(ヨーロッパが中心)各国のデータを比較している。それによると国ごとにデータはバラバラで、ワクチンと超過死亡の間に一貫した関連性は認められていない。いまのところワクチンと超過死亡に関しては、はっきりしたことはわかっていない。世の中でよくみる超過死亡とワクチンとの関連性は注意してみるべきであろう。

 

私は昔、大量の遺伝子発現データ統計解析を行っていたので、統計の素人というわけではないが、新型コロナウイルス関連の統計は現実世界real worldの統計で、実験研究という限られた世界のデータとは全く違った難しさがある。現実世界では、いろいろな事柄が相互作用して研究対象に影響を与える。例えば超過死亡の場合、コロナ感染症やワクチンだけでなく、人口動態(日本では高齢化が進んでいるので死亡数は常に増加傾向にある)、医療環境(ロックダウンでは医療環境も悪化する)、その他さまざまな未知の因子が関与してくる。これら統計の数値に影響を与える様々の要素を考慮して分析する必要があるので、大変な作業になるのだ。そこで自分ではデータ解析をせず、人のデータ解析を読むことにしている。

 

超過死亡の評価は難しそうなので、厚生労働省の死亡報告データを調べてみた。

新型コロナウイルスについては、

令和3年2月17日から令和4年9月4日までの期間ファイザー製ワクチン接種者について1658人(1000万人あたり70件)(新型コロナワクチンの副反応疑い報告について|厚生労働省)。

これに対しインフルエンザワクチンでは、

平成26年のシーズンで52,378,967人の接種者のうち5人(1000万人あたり1件)(PMDA-厚生労働省下部機関-の資料)。

副反応報告基準はどちらのワクチンも同様と思われるので、この差分、すなわち1000万人あたり69件は新型コロナウイルスワクチンによるもの、と考えられる。この数値が多いか少ないかは、人によって判断が異なると思うが、例えば稀だが血液疾患としてはよくみる慢性骨髄性白血病の発症率が1000万人あたり100人ほどだ。