精密医療電脳書

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新型コロナウイルスまとめメモ(その2) 〜 特にオミクロン株の起源

現時点(2022年8月)での個人的な見解をまとめた。

 

日本の現状

8月下旬現在でも感染状況は、世界的に見ても最悪だ。

www3.nhk.or.jp

この半年のワクチン接種率は日本が68.9%と他の国と比較して圧倒的に多い。特にイスラエルなど1.95%に過ぎない。イスラエルは世界で最も早く、そして過激にワクチン接種を勧めてきた国だが、4回以上の接種にメリットがないことが知れ渡り、接種率が激減している。

2022年8月20日までの6ヶ月間のワクチン接種率(正確には100人あたりの接種数)の国際比較。日本がずば抜けて多い。

昨年9月のイスラエルがワクチン接種率で世界で先頭を走っていたころの記事だが、現在の日本と似ていて感染爆発が起こっていた。日本は10ヶ月遅れでイスラエルを追っかけていることになる。ギアート・バンデン・ボッシュ博士が2021年3月に予測していた通りの展開になっている(ギアート・バンデン・ボッシュ)。

johosokuhou.com

奇妙なことに臨床研究では海外の研究、国内の研究ともに、4回接種のメリットが数値として出ている(たとえば

https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/69107/69107_20220727165627-1.pdf

にまとめられている)。専門家会議の答申はこれらの研究に基づいているので、4回接種や5−11歳児童への接種推奨はルールとしては問題はないのだが、臨床研究の結果が現実を反映していないので、臨床研究のデザインに問題がある、と考えるのが論理的だろう。専門家会議のメンバーが論理的とは思えないが

www.nikkei.com

原因は新型コロナによる増加、ワクチンによる増加など色々云われているが、多分原因は明らかになることはないだろう。個人的にはコロナウイルス対策に医療資源が集中したため一般の医療がおろそかになり、今までは助かった高齢者が死亡したためではないか、と考えている。

 

オミクロン株の起源

宮沢孝幸氏の長いインタビューがYouTubeにアップされている(【※すぐ消します】ノーカット完全版|京大ウイルス研究 宮沢孝幸氏|コロナとワクチンとサル痘 - YouTube)。新型コロナウイルスに関するウイルス専門家としての意見が聴ける。TVでは一般の人への提言が中心だが、この動画はウイルス学者として現象の説明を行っている。遺伝子配列を扱う点では共通だが、私自身は癌が専門なので微妙に意見が異なるところが面白かった。ウイルス起源説に関しては、当初自然発生だと考えていたが、オミクロン株の登場で見解が変わったという。

オミクロン株は、以前にもまとめたが、自然発生とは考えにくい配列構造を持っている。

オミクロン株:人工ウイルスの可能性 - 精密医療電脳書

オミクロン株:人工ウイルスの可能性(続き) - 精密医療電脳書

 

オミクロン株のスパイクタンパク質遺伝子の顕著な特徴は、アミノ酸置換を伴う非同義置換がスパイク蛋白上で30個であるのに対し、アミノ酸配列置換のない同義置換は1個しかない、という点だ。自然界では、塩基置換はランダムにおこるので重要な活性があるアミノ酸変異(非同義置換)が起こるまでに多数の同義置換が起こる。このように非同義置換のみ蓄積することは、ルーレットで勝ち続けるのと同様、確率論的に起こり得ないことなので、自然に発生した変異株ではなくて、何者かがつくったウイルスとするほうが考えやすい。ところが、どのようにしてつくったのか(厳密にはどのようにして配列を設計したのか)現在の科学では見当がつかないのだ。宮沢氏の話だと、このことはウイルス学者の中で広く共有されていて、皆「困った、困った」と云っている。私は分子生物学博士課程の学生なら理解できるレベルの現象だ、と考えていたが、そのとおりで、ウイルス専門家の共通認識のようだ。つくりかたがわからないので、「神様がつくった(宮沢氏)」という人や宇宙人の仕業という学者もいるということだ。人類が重症化リスクの高いデルタ株で困っていたところ突然悪性度の低いオミクロン株が出現して、弱毒化生ワクチンのような働きをした。遺伝子の構造を調べてみたところ現在の科学技術ではどのようにつくったのかわからない。そのため神や宇宙人の所業と考える研究者が出てきているわけだ。

 

オミクロン株の起源についての仮説をまとめてみると、つぎの3つになるだろう。

1.可能性は極めて低いが、自然にSARS-CoV-2から進化した。

2.一般の科学者コミュニティにはまだ知られていないが、現在最先端の科学技術でつくった。とくにタンパク質立体構造予測がディープラーニングで可能になりつつあり(ディープマインドのAlphafold 2)、Alphafold 2でシミュレーションを繰り返せば目的の構造を決めることができるのかもしれない。

3.人類の科学者コミュニティとは接触していないもの(神、宇宙人、人類社会とは隔絶した文明など)が、人類よりも進んだ科学技術を使ってつくった。

1.の可能性は低い。3.は立証が難しい。オミクロン株の起源は新型コロナ最大の問題だろう。