精密医療電脳書

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バンデン・ボッシュ博士のブースター接種に関する見解:重症化抑制はワクチン本体ではなくアジュバントの効果である

医学情報は背景情報を把握しなければ的確な解釈ができないので、医学者であっても専門でない領域は難しい。新型コロナウイルスについて一時実データを自分で解析しようとしたが、その前に十分な専門的知識を学習する必要があり、面倒なのでやめた。そこで、自分では直接データや原著論文の分析はせず、他の人の分析を追跡することにした。他の専門家の頭脳を拝借するわけである。マスコミに登場する専門家は、ありきたりの発言しかしないので有用ではない。SNSでは先鋭的な情報発信をしている人が多数いるが、それぞれ自身の立場(ワクチン推進とかワクチン反対など)で情報発信を行うため、発信する情報やその解釈に強いバイアスがあり、問題点がすぐに見える人が多い。今でも有用と考えている数少ない情報発信者の一人が、数回紹介しているギアート・バンデン・ボッシュGeert Vanden Bossche博士である。

新型コロナウイルス対策の中心は、感染防止対策とワクチンだが、ワクチンの最大の問題点はワクチン集団接種によるワクチン耐性変異株だ。バンデン・ボッシュ博士はこの点についていち早く警鐘を鳴らしてきた専門家だ。もともと製薬企業でワクチン開発に携わってきた研究者にもかかわわらず反ワクチンの立場なので、利益相反がない点信頼が持てる。2021年3月の時点で、すでにワクチン接種者への感染拡大を予測していた、という実績がある(バンデン・ボッシュ博士の公開書簡:パンデミック下の大規模ワクチン接種の危険性を指摘)。ただ、アカデミアの研究者は論文に発表された事実に基づいて精密に議論を組み立てるのに対し、彼は大雑把に議論を展開する傾向があり、博士の議論に説得力がない、とする専門家も多いのではないか、と思う。

3回目接種、ブースター接種には重症化抑制効果があるが、バンデン・ボッシュ博士はどう考えているのだろうか。彼の見解は意外なもので、重症化抑制はワクチン本体、つまりRNAがつくるワクチンのスパイク蛋白ではなく、ワクチンに含まれるアジュバント(免疫増強剤)の効果だ、としている。ワクチンは主成分であるウイルス蛋白やRNAだけ人体に接種しても弱い免疫誘導しかないため、アジュバント(免疫増強剤)が必ず含まれている。免疫には、抗体による獲得免疫とは別に、細菌ウイルス侵入直後に働く自然免疫があるが、アジュバントには自然免疫も増強する作用がある。博士は、ブースター接種による抗体誘導ではなくアジュバントによる自然免疫増強で重症化が抑制されていると考えている。ブースター接種で誘導される抗体は変異株には最適化されていないので、感染防止効果は弱く、重症化抑制効果も抗体ではなくアジュバントによる、という仮説である。

イスラエルの指導的ウイルス学者であるDr. Rivka Abulafia-Lapidは、デルタ株を含む全ウイルスにワクチンが効果があると考えており、6−8ヶ月間感染は抑制される、と予測している。これに対し、バンデン・ボッシュ博士はブースター接種により誘導される抗体の効果は不完全で、冬場また感染が拡大する、と予測している(下図)。どちらが正しいが、すぐにわかる。

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Dr. Rivka Abulafia-Lapidとバンデン・ボッシュ博士(what the science tells...)のイスラエルでの感染予測。下記サイトより転載。

 

元のサイト

www.voiceforscienceandsolidarity.org