精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 肺がん ウイルス 人類観察

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)

 

第63回大阪国際フェスティバル2024

アンドリス・ネルソンス指揮

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

日時:2024年11月9日(土)(金)15:00開演

会場:フェスティバルホール

指揮:アンドリス・ネルソンス

独奏:五嶋みどり(ヴァイオリン)

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目:

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 op.19

バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 プレリュード

マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調

スッペ/軽騎兵序曲

バッハとスッペはアンコール

 

2020年の来日コンサート(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 Wiener Philharmoniker - 精密医療電脳書)から4年ぶりでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートを聴いた。プログラム全体としては五嶋みどりのヴァイオリンは素晴らしかったが、ウィーン・フィルはまあまあ、という印象だったが、色々発見があった。

まず前半のプロコフィエフは管弦楽はあまり目立たず、ヴァイオリン中心の音楽。ヴァイオリン協奏曲第1番は他のプロコフィエフの協奏曲とは全く印象が異なって、バレエ音楽を聴いているような感じだった。他の協奏曲が古典的な様式に則っているのに対し、バレエ音楽のように具体的なストーリーではなく、ヴァイオリン独奏がダンサーのかわりで抽象的なストーリーを構築している、という楽曲である。五嶋みどりの実演は30年以上前に聴いたドヴォルザーク以来だが、その時と同じで圧倒的な演奏だった。そして次のアンコールのバッハはさらに素晴らしかった。わかった点が2つ。先日イサベル・ファウストのコンサート(イザベル・ファウスト バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータ全曲演奏 - 精密医療電脳書)を聴いたが、バッハの音楽としては疑問が残った。イサベル・ファウストはバッハ無伴奏が最終目標で、古楽器演奏法を含め多くの研鑽を積んでおり多分道半ばのようだが、五嶋みどりはヴァイオリン演奏を極めることでバッハの本質に既に到達している。作曲家も同じでプロコフィエフの30分はバッハの1分にも匹敵しない(もちろんバッハにもつまらない音楽があるので普通の曲同士の比較)。

 

後半のマーラーとスッペについて。マーラーは19世紀後半から20世紀初頭ウィーンで活躍した作曲家・指揮者だが、マーラーの交響曲はウィーン・フィルハーモニーの特殊な音色で聴くメリットはあまりない。この点は同じ後期ロマン派のブルックナー、ワーグナーと大きく異なる点で、この二人の音楽ではウィーン・フィルハーモニーは他のオーケストラには不可能な効果を出す。カルショウの「ウィーン・フィルハーモニーは最高のワーグナー・オーケストラ」という言を待つことなく、実際にウィーンでウィーン・フィルハーモニーの音楽に接した人に共通する意見だ、と思う。今回のマーラーは、とくに最上の演奏ではなかった。部分部分は良いのだが、全体の構成が甘く、緊張感が持続しない。早く終わってほしい、と感じるほどだった、だが、マーラーが終わって、アンコールの軽騎兵序曲になると、一変して素晴らしい音楽だった。特に曲真ん中後半の弦の合奏ではウィーン・フィルハーモニーでは、長年あの聴きたかった独特の音色は聴けた。2020年のコンサート、今回のマーラーと聴いてウィーン・フィルハーモニーは変質してしまった、と考えていたが、それはコンサートオーケストラであって、オペラハウスでは昔と同じ音を奏でているのではないか。そう期待させるアンコールの演奏だった。