SUIは革新的なブロックチェーン技術を持つ暗号資産で、SUI自身あるいはSUIの後継技術が将来の金融システムの標準になる、と予想している。SUIの技術のコアである資産中心モデルについては以前の論説で説明した。
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SUIの優位性
SUIの技術上の優位性は資産中心モデルに依るところが大きい。他の暗号資産は全てアドレス中心モデルであり、モデルは変更不可能だ。そのため現行の暗号資産にSUIの技術を導入することは不可能である。さらにSUIはプログラミング言語など基礎的な部分をFacebookの時代から構築しているので(SUIの開発者はFacebook時代にLibra, Diemの2つのデジタル通貨の開発に携わっていた)、新たに競合する暗号資産をつくることは非常に難しい。資産中心モデルはブロックチェーン、スマートコントラクトに次ぐ3番目の技術革新であり、将来実社会で実装されるブロックチェーンは資産中心モデルの暗号資産になる。これまでの技術開発経緯を鑑みると、実社会に実装されるブロックチェーン技術はSUI自体あるいはMysten Labが新たにつくるSUIの後継になるだろう。
SUIをめぐる最近の動き
7月22日の論説以降、SUIに関して色々な進展があり、市場価格は7月22日には127 SUI/JPYだったが、9月20日現在200SUI/JPYを超えていて、57%以上上昇している。
この間の主要な動きとしては、
7月24日 SUI主要アップデート(mysticeti update):でSUIの処理速度は10万TPSになり、トランザクション速度は他の暗号資産を圧倒している。またトランザクションの待ち時間(latency)も大幅に短縮した。
8月8日 米大手暗号資産投資会社グレースケールがSUIの投資ファンドの販売を開始(グレースケール、仮想通貨SUIとTAOの投資ファンドを販売開始)。
9月11日 グレースケールがSUIの投資ファンドの販売を適格投資家向けに販売開始(Grayscale、適格投資家向けにSUIトラストを開始 - Bitcoin News)。
9月17日 ドルに連動したステーブルコインUSDCがSUIネットワークで使用可能になった。USDCはドルペッグのステーブルコインでは時価総額2位。なお、時価総額3位のステーブルコインFDUSDは4月にすでにSUIネットワークで使用可能になっている(ファーストデジタル、総供給量30億ドル超のステーブルコインFDUSDをスイに導入——DeFi注力の一環 | CoinDesk JAPAN)。
SUIのソラナに対する優位が確立したのは、mysticeti update以降だと思うが、グレースケールやステーブルコインはこのアップデート以前から準備していたはずなので、業界ではSUIの技術的優位性はすでに周知のことだったのではないか、と思われる。
暗号資産市場の役割
SUIのコンセンサスアルゴリズムはDelegated Proof of Stake (DPoS)であり、イーサリアム等が採用しているProof of Stake (PoS)とは少し異なる。PoSではネイティブトークンの所有量に応じて決済を行う権利が与えられるが、DPoSの場合は決済者(ディリゲートDelegate)を選ぶ投票権がネイティブトークンの所有量に応じて与えられる。PoSの場合はネイティブトークンの所有者(正確には所有者のノード)が決済を行うが、DPoSでは決済は外部委託で委託先であるディリゲートをネイティブトークンの所有者が投票で選ぶ。
PoSとDPoSのどちらもネイティブトークンの所有量が多い程決裁権が大きい。買い占めれば、決済権を独占できる。ビットコインはPoWなので、決裁権は計算機能力に依存するため金融機関が動くことはないが、PoSとDPoSはネイティブトークンの大量所有で決裁権を独占できるので金融機関が独占する可能性がある。従って目先の利く(SUIの将来性を見通している)機関はSUIを買い占めると同時に、一般投資家の参入を防ぐために SUIの価格を暴騰させるだろう。結果的に金融機関が決済する現在のシステムと同じになりそうだ。ビットコインはもともと国家や大企業から独立した決済システムを目標に開発されたが、暗号資産の開発の方向はその方向には向かっていないようだ。
暗号資産は過去何度もバブルを起こしているが、もし人為的なものであるとするならば、独占と価格上昇による一般投資家の排除が目的であろう。