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ファイナルファンタジーX:SFの衣を纏わない仮想世界の物語

今週のお題「SFといえば」

 

この1ヶ月の間ゼルダの伝説に引き続きファイナルファンタジーXに熱中していた。最強の裏ボスを倒してしまったので、流石に飽きてきてしまった。それでは医学研究でもするか、というところだ。

 

ファイナルファンタジーシリーズの多くはスマートフォンに移植されており、手軽に遊べるので長年親しんできた。IからVIそれからIXをクリアしてきたが、Nintendo Switchが家に転がっていたので、残っているXに挑戦した。ゲームはオーソドックスなロールプレイングゲームで、メンバーを強化して難敵を倒していく。アクションゲームではないので反射神経は必要ではなく苦労しない。ただストーリークリアまでは問題ないのだが、裏ボスを攻略するためには限界まで攻撃力を強化する必要があるが、それを達成してしまうと、通常攻撃でただ殴り続ける、という単調な作業になってしまい、ゲームとしての面白みが減退する。まあ裏ボスを倒してしまうとあまりすることもないので、ゲームの面白みが消失しても問題はないかもしれない。

 

ファイナルファンタジーシリーズ中でも屈指の名作であり、物語は素晴らしい。特に設定された世界は興味深い。物語はザナルカンドという文明都市で始まる。ザナルカンドが突然怪獣に襲われ、そのときに主人公ディーダは1000年後の未来へ飛ばされる。その世界スピラは1000年前の世界戦争の結果、機械文明を否定した世界で、エボン教という宗教が支配していた。スピラは生死の境が不明瞭な世界で、死人は召喚士(魔術師のようなものと考えて良い)が「異界送り」を行うまでは死後の世界(異界)へは行かない。そのためずっとスピラにとどまり続ける死人もいる。更に特徴的なのは「祈り子」の存在だ。これは召喚士が人を変換させたもので、生命は奪われているが精神はまだ残っている存在だ。物語後半では、物語の最初にでてきたザナルカンドは、実は「祈り子」の夢(「夢のザナルカンド」)であることが明かされる。ザナルカンドの召喚士エボンは、1000年前の戦争でザナルカンドが滅亡しようとするとき、ザナルカンドの住民を全員「祈り子」に変え、その「祈り子」が見る夢として、永遠にザナルカンドを存続させようとした。ザナルカンドは「祈り子」によりつくられた仮想現実の世界で、ディーダはそこの住人で、なぜか(論理的に説明不明だが)スピラへ現れたことになる。SFのコンピュータ・シミュレーションでつくられた仮想現実の世界のようなもので、科学技術ではなく魔術(召喚術)で同じことを達成している。SFで似た例をあげると、ソード・アート・オンライン・アリシゼーションではコンピュータ・シミュレーションで中世の世界を再現し、その世界でいろいろな負荷を与えることにより人間並の人工知性をつくることを目標としている。結果的に人と同じ知性を獲得した人工知性アリスは機械の筐体により仮想現実の世界から現実世界へ現れる。

 

ファイナルファンタジーXは、2001年の作品だが、マトリックス(1999年)も同時期の作品だ。これも仮想現実の世界が舞台で、ほとんどの人類はAIがつくった卵型の容器の中で眠っており、AIにエネルギー(?)を供給している。そしてAIが提供する仮想現実の世界で生きているのだ。一部の人間は覚醒してAIから人類を解放するために戦っている。主人公ネオはもともと仮想現実の世界で生きていたのだが、覚醒した人々に解放され、AIとの戦いに参加することになる。同時期の類似の設定の作品であり、また現在リバイバルされている点も興味深い。マトリックスの続編マトリックスリザレクションズは2021年公開され、ファイナルファンタジーXは2023年に歌舞伎としてのリバイバルが決定している。

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