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輪るピングドラム:混乱した現実社会のミニアチュア

Penguindrum by Salvador Dali (Stable Diffusion)

「輪るピングドラム」は2011年のTVアニメーションで、幾原邦彦の監督・脚本作品だ。独創的な作風のアニメーションで、他のクリエーターに大きな影響を与えたという。しかしストーリーが難解で、熱狂的なファンが一部にはいたが、大きく注目を集めたわけではなかった。昨年10周年でTVシリーズがリバイバルされ、今年劇場版が公開された。

penguindrum10th.jp

最近アマゾンプライムで推薦していたので、全エピソードを視聴した。記憶に残っているエピソードやシーンがあるので、2011年に一部見ていたようだ。それ以上の記憶はない。今回見て強い印象を受けた。作者である幾原邦彦は本作のテーマは「家族」と云っており、家族間の愛と葛藤が主題であることは間違いない。しかしその背景は、複雑なファンタジーだが、現在の社会情勢を的確に要約したものとなっている。10周年で復活して劇場版がつくられたのも社会情勢の類似性が背景にあると思われ、マトリックス ・レザレクションズと状況が似ている(メディアとSNSがつくる仮想現実の世界 〜 マトリックス新作の意義 - 精密医療電脳書)。

 

主人公の高倉3人兄弟妹は、両親が16年前の大規模多発テロの主犯で逃亡中、現在兄弟妹だけで暮らしている。妹の陽毬は、病気で余命わずかとなっていたが、水族館で倒れて絶命した。ところが水族館買ったペンギン帽をかぶった途端息を吹き返し、別人格プリンセス・オブ・ザ・クリスタルが現れ、2人の兄、冠葉と晶馬にピングドラムを探すように命ずる。陽毬は助かったわけでなく、病を治すためにはピングドラムが必要だ、という。だが、ピングドラムが何なのか、という説明はしない。

冠葉と晶馬は、荻野目苹果の持っている日記がピングドラムだ、と考え、彼女を追跡する。この日記は、苹果の姉、荻野目桃果のもので、日記に書かれている呪文を唱えると「運命の乗り換え」ができる。桃果はこの呪文を使って16年前の大規模多発テロを「運命の乗り換え」止めようとした。しかしテロの真の首謀者 渡瀬眞悧 と刺し違える形になり、テロを小規模に止め眞悧を現実世界から消す事ができたが、自身も眞悧の「呪い」の中に閉じ込められた。現実世界では桃果も眞悧も死亡したことになっている。

そして今、日記を巡って人が入り乱れ、渡瀬眞悧が再び世界の破壊を目指して動き出している........

 

このアニメーションのストーリーの根底にある重要な設定は大規模爆破テロで兄弟妹の両親がその主犯であることだ。このテロは、爆破テロという点は異なるが、1995年3月20日、駅名が丸ノ内線と同じ地下鉄、という設定で、地下鉄サリン事件と日付と場所が同一になっている。また児童人身売買の描写もある。「こどもブロイラー」は世界から捨てられた子供たちが集められる施設で、子供達はベルトコンベアに乗せられ、巨大なシュレッダーで粉々に砕かれて処分され透明な存在」となり、この世から消えてしまうと説明されている。また冠葉と晶馬が餓死寸前まで小さな檻に閉じ込められるシーンがある。児童人身売買は数年前から米国保守系情報ソースから繰り返し流されていたメッセージが、この1年位で漸く主流メディアが伝えるようになってきた。特にカナダ寄宿学校の先住民児童虐待はひどい話で、今年の7月にやっとローマ教皇がキリスト教徒として謝罪した(遺体は“1000人以上” 暴行、レイプ…先住民の子どもを大規模虐待~カナダ寄宿学校の闇〜 | TBS NEWS DIG)。「こどもブロイラー」や檻の中の子供の描写は知っていなければできない描写なので、この作品がつくられた2011年に日本でも、作者の幾原邦彦氏を含む少数の人は知っていたことになる。

 

更に重要な設定は、大規模テロの水面下で渡瀬眞悧と荻野目桃果が人知れず争っている点だ。村上春樹の「カエルくん東京を救う」を紹介することで(陽毬の夢の中の図書館のシーン)、この設定の意味がわかる仕掛けになっている。現在の現実世界ではパンデミックやウクライナ侵攻は表面上のことで水面下では次の金融システムの主導権をめぐる争いが起こっている、と解釈するのが適切だろう。「輪るピングドラム」はアニメーションを使った、この現実社会のミニアチュアだ。

村上春樹の「カエルくん東京を救う」は、東京大地震を人知れず防いだカエルくんの物語である。中村メイコによる朗読がニコニコ動画で聴ける(かえるくん、東京を救う - ニコニコ動画)。

さて現実世界はどうなっているかというと、水面下の争いの決着がついたようだ。ローマ教皇が各国の中央銀行へ預けている資産を9月中にすべてバチカン銀行に集めるように指示している。既存勢力は調子が悪そうだ。

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