精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 肺がん ウイルス 人類観察

第119回肺癌学会関西支部会:堺市立総合医療センター病理診断科のコンパクトパネル使用実績など

2204年3月2日に第119回肺癌学会関西支部会が神戸商工会議所で開催された(プログラム)。WEB参加。肺がんコンパクトパネル関連の演題は3つ。

 

堺市立総合医療センター 病理診断科  安原 裕美子 他 「当院での肺癌コ ンパクトパネルの有用性について」
大阪国際がんセンタ ー 呼吸器内科  國政 啓 他 「細胞診検体を用いた肺癌コ ンパク トパネルの検討」
近畿大学 腫瘍内科/ゲノム医療センタ ー 高濱 隆幸 「マルチ検査の実施と検出状況から 見える 課題 - 各ドライバー変異に対する標的治療の有用性について」

 

堺市立総合医療センター 病理診断科

この施設では2023年2月からコンパクトパネルを主に使っている。承認されていない希少変異症例(BRAF, RET)については施設負担で承認診断薬の診断を追加していた。2023年2月から2024年の1月までの118例中組織診は74例(腺癌61例)、細胞診は44例(腺癌31例)。細胞診検体はGM管で提出。腺癌の検査症例92例中EGFR変異陽性は37例(40%)。他の単施設研究と同様Cobasと同等の検出率だった。

安原先生のメッセージは、
・コンパクトパネルは、腫瘍量腫瘍含有割合が低くても検査可能の検査である
・医療資源の適正化
・提出のための手間が簡便
・検査技師・病理医の業務軽減
・検体取替等のリスク軽減
そして「電カルの向こうで働いてくれている人のことを考えて欲しい」だった。

 

大阪国際がんセンター 呼吸器内科

これは國政先生のLung Cancer論文の口頭発表(肺癌患者における各種細胞診検体を用いたLung Cancer Compact Panel™の臨床応用)。ケアネットでも紹介されている。

www.carenet.com

 

近畿大学 腫瘍内科/ゲノム医療センター

遺伝子検査の実施状況を調査するREVEAL(WJOG15421L)試験の結果(Biomarker Testing in Patients With Unresectable Advanced or Recurrent Non–Small Cell Lung Cancer)の説明。以前の記事でも紹介した。ケアネットも掲載。

www.carenet.com

REVEALの他に全国204病院15,719人のDPCデータ(2019年1月〜2022年12月)を使った分析を紹介した。対象期間を通して遺伝子検査実施割合は676.9〜78.5%(平均74.1%)で推移しているが、2022年から5種類以上の遺伝子検査を実施した割合が急増している。これは分子標的薬発売/適用追加やマルチ遺伝子検査のコンパニオン診断としての発売・適用追加によりある程度説明できる、としている。

なお、自施設(近畿大学ゲノム医療センター)の変異検出率の報告もあった。2020年6月25日から2022年1月5日で、腺癌138例中EGFR変異陽性例は35例(25.5%)だった。この数値は堺市立総合医療センターの40%(92例中37例)より明らかに悪い。

 

コメント

これまでオンコマイン、AmoyでのEGFR変異陽性率の低下、コバスよりも1割程度の低下が云われている(オンコマインとAmoyの問題点)。マルチ遺伝子検査の普及は良いことだが、この問題を放置しておくのは危険だろう。