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肺がん遺伝子検査の現状打開について:Bing AIは肺がんコンパクトパネルを推薦、Bardはリキッドバイオプシー等の新しい技術を提案

これまで自動生成AIについては、主に情報収集を目的にPerplexity ai使ってきた。最近Bing AIが一般に公開され、OpenAIの最新言語モデルGPT-4が無料で使えるようになった。GPT-4はchatGPT有料版の言語モデルだ。AIとしての性能は最初からGPT-4で試したかったので、Bing AIを待っていたが、ようやく使えるようになった。Bing AIとGoogleのチャットタイプAI、Bard、この2つの自動生成AIのインテリジェンスをチェックすることにした。

 

 

Bing AIとBardに対して、自身の専門分野である肺がんの遺伝子診断について、一般的な質問をしてみた。

 

質問

「進行性肺癌の治療選択のためには、遺伝子検査を行って使える分子標的薬があるかどうか調べなければなりません。5年ほど前には、EGFRとALKしか薬剤がなかったので、それぞれの遺伝子検査を行っていました。しかし最近対応した薬剤のある遺伝子が7つまで増えたので一括して遺伝子検査を行う、いわゆる遺伝子検査パネルが使われるようになっています。しかし遺伝子検査パネルは肺癌組織の腫瘍細胞含有率が20%以上ないと検査できません。この現状を打開したいのですが、良い方法はありませんか」

 

Bing AIの回答

Bing AIは肺がんコンパクトパネルを打開策として提案してきた。

 

この問題に対する一つの解決策として、細胞診検体を用いた遺伝子パネル検査があります(肺癌の細胞診検体を用いたコンパクトパネル検査は成功率100%でコンパニオン診断としての性能も良好【WCLC 2022】:がんナビ)。細胞診検体とは、気管支ブラシ擦過診 (TBB) や気管支洗浄液 (TBNA) などの細胞を採取する方法で得られる検体です。細胞診検体を用いた遺伝子パネル検査では、肺癌コンパクトパネルという国産初の肺癌遺伝子パネルが開発されています。この肺癌コンパクトパネルは、次世代シーケンス(NGS)技術を用いて、肺癌における8つのDruggable遺伝子(EGFR、BRAF、KRAS、ERBB2、ALK、ROS1、MET、RET)の検出が可能です。また、聖マリアンナ医科大学病院との共同研究で肺癌コンパクトパネル臨床検査センター受託開始のお知らせによると、細胞診検体を用いた肺癌コンパクトパネルの解析成功率は100%であり、既承認品と比較しても陽性一致率98.7%と非常に高い一致率を示すことが確認されています。したがって、細胞診検体を用いた肺癌コンパクトパネルは、腫瘍細胞含有率が低い場合でも高感度・高精度に遺伝子変異を検出できる可能性があります。

 

肺がん専門医でもコンパクトパネルの先進性について確信を持っている人は少なく、Bing AIはその少数意見と同じ見解を持っていることになる。ただし、この返答は会話のスタイルが「創造的」の場合だ。Bing AIの会話スタイルには「創造的」以外に「厳密」と「バランス」がある。「厳密」では、腫瘍細胞含有率が低い場合の遺伝子検査についての情報は見つからないと返答、医師への相談を勧めてきた。「バランス」では現在の遺伝子検査パネルを打開する方法は、確立されていないようだ、と返答してきた。「厳密」と「バランス」は同じ傾向で、基本的に有益な打開策はない、という保守的な結論だ。現時点の肺癌専門医の一般的見解に近い。それに対し「創造的」では、必ずしも専門家の意見が一致しているわけではないコンパクトパネルを回答してきた。Bing AIに訊くと「創造的」は事実と異なることや不適切なことを言う可能性が高い、ということだ。面白い。

 

Bardの回答

Bardは、バイオ関係の記者が言いそうな回答を返してきた。

 

現状を打開する方法について、いくつかのアイデアをご紹介します。

1.リキッドバイオプシーを使用する。リキッドバイオプシーとは、血液や尿などの体液からがん細胞を採取して遺伝子検査を行う方法です。腫瘍組織の採取が困難な場合でも、がん細胞を検出することができます。
2.新しい遺伝子検査技術を開発する。次世代シーケンサー(NGS)などの新しい遺伝子検査技術により、腫瘍細胞含有率が低くても、がん細胞を検出できるようになるかもしれません。
3.遺伝子検査の保険適用範囲を拡大する。現在、遺伝子検査は保険適用外のため、患者さんにとって高額な負担となっています。遺伝子検査の保険適用範囲を拡大することで、患者さんの負担を軽減することができます。
4.遺伝子検査の啓蒙活動を行う。遺伝子検査の有効性や必要性について、患者さんや医療関係者に理解を深めてもらう必要があります。
これらのアイデアが、進行性肺癌の治療選択のための遺伝子検査の現状を打開し、患者さんの治療に役立つことを願っています。

 

いくつか事実誤認がある。2.の新しい遺伝子検査技術開発は妥当な線だが、次世代シークエンサーはすでに遺伝子検査パネルで使われている技術である。3.の保険適用も同様で、遺伝子検査パネルは保険収載されている。全体的に記者が書くような内容で、専門家ではなくて一般人の回答だ。

 

まとめ

Bing AIは専門家的な対応で、会話スタイルによって保守的な立場か先進的な立場かかわってくる。自由度が高い(「創造的」)場合は、先進的で肺癌コンパクトパネルを紹介したが、そうでない場合は(「厳密」と「バランス」)は有効な打開策は見当たらない、という答えを返してきた。他の人の意見を訊くと「創造的」が使い勝手が良い、という意見が多いが、Bing AI自身が言うように事実と異なることや不適切なことを言う可能性が高い点には要注意だ。Bardの場合は、一般人が考えたような回答であった。Bing AIとBardでは明確に性能が違う。