精密医療電脳書

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メルク主催 テプミトコ®&マルチCDx Webセミナー 〜 短い院内TAT(turn around time)がもたらすベネフィット

2024年3月19日にメルク主催の肺がんコンパクトパネル関連のセミナーが行われた。

 

テプミトコ®&マルチCDx Webセミナー
テーマ:コンパニオン診断のTATについて考える ~短い院内TATがもたらすベネフィット~

森川 慶 細胞診検体によるマルチCDxの実践 ~肺がんコンパクトパネル®におけるTAT短縮のベネフィット~
國政 啓 いかに迅速に遺伝子パネル検査の結果を患者さんへ届けるか

 

遺伝子検査の場合、出検から検査結果受領までの時間はturn around time (TAT) と呼ばれ、遺伝子検査の性能を評価するファクターの一つだ。実臨床では患者から検体採取してから出検までの時間(院内TAT)も重要で、院内TATが短ければ、全体のTATを短くすることができる。AmoyはオンコマインやコンパクトパネルよりもTATは短いが、細胞診はできない。コンパクトパネルで細胞診検体を出検すれば、病理にかかる時間分院内TATを短縮できる。セミナーを主催したメルクの意図はコンパクトパネルによる院内TAT短縮のメリットど自社製品デアルテポチニブの紹介のはずだが、この2つのポイントについては散漫な印象を受けた。

森川先生はコンパクトパネルの一般的紹介と自施設での気管支鏡検査のビデオ紹介、國政先生は緊急を要する患者で凍結組織を用いたAmoy検査(ガイドライン非推奨)で院内TATを短縮した例の紹介だった。國政先生は旧所属施設の後輩だが、話の内容に特段のバイアスはなかった。

 

TATに関するデータ

聖マリアンナ医科大学(森川)コンパクトパネルの場合は、

検体取得から検査レポート受取までの日数は中央値9日、出検から検査レポート受取までは中央値7日であった。検体採取から出検まで(院内TAT)2日しかかかっていないことになる。

大阪国際がんセンター(國政)Amoyの場合は、

病理のレポートの受取から検査レポート受取までの日数は中央値6日、出検から検査レポート受取までは中央値6日であった。Amoyでは病理レポートの内容で出検可能かどうか判断しているようだ。

大阪国際がんセンター(國政)オンコマインの場合は、

病理のレポートの受取から検査レポート受取までの日数は中央値13日、出検から検査レポート受取までは中央値8日であった。オンコマインでは病理レポートの検討後出兼用の検体切り出しを行っているようで、このステップで5日かかっている。コンパクトパネル細胞診であればこの時間は0日になる。また大阪国際がんセンターでは検体取得から病理のレポート受取までの時間が明らかでないので、聖マリアンナ医科大学のデータと直接比較はできない。

まとめると

TAT(通常の定義、出検から検査レポート受取まで)

聖マリアンナ医科大学コンパクトパネル    7日
大阪国際がんセンターAmoy    6日
大阪国際がんセンターオンコマイン    8日

院内TATを含めた全体のTAT

聖マリアンナ医科大学コンパクトパネル(細胞診)    9日
大阪国際がんセンターAmoy        6日+検体採取から病理レポート受取までの時間
大阪国際がんセンターオンコマイン    13日+検体採取から病理レポート受取までの時間

異なる施設のデータなので直接比較は難しいが、コンパクトパネルで細胞診検体を用いた場合は、TATに関してAmoyに劣っている、ということはなさそうだ。ただしプレゼンテーション後の議論で、ROSE(Rapid On-Site cytologic Evaluation、迅速細胞診)ができる施設は限られている、ということで、できない場合は出検を病理診断完了まで待つ必要がある。

 

なお、コンパクトパネルによる細胞診検体の使用は肺癌診療ガイドライン2023年版ですでに推奨になっている(CQ17.原発性肺癌のバイオマーカー検索に,細胞診検体は有用か?)。もちろん他のパネルは非推奨。