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BRICSの台頭とドル基軸通貨制の崩壊

ロシアのウクライナ侵攻とその後の経済制裁によって通貨制度が大きく変わる可能性が高まり、業界でも指摘する人が現れた。このことは以前の記事で紹介した。

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ウクライナ侵攻に対する米国の経済制裁では、ロシアがFRBに預けているドル外貨準備を凍結して使用不能にした。これは経済以外の要因で通貨が使えなくなることを意味するため、通貨の信頼性を著しく傷つける。ユーロや円の場合も信頼性が低下するが、ドルは基軸通貨であるため、そのダメージは著しく大きい。クレディ・スイス(Credit Suisse)の金利ストラテジスト、ゾルタン・ポズサー(Zoltan Pozsar)氏はいち早く1971年以降のドルを法定基軸通貨とするブレトン・ウッズ2の終焉を指摘した。

 

現在のドル基軸通貨制は、1970年代の初めにサウジアラビアとの交渉で、米国はサウジアラビアの安全を保障するかわりに原油取引をドルのみで行う(ペトロダラーシステム)という取り決めに基づいている。ところが、2021年8月にサウジアラビアとロシアが軍事協定を結んだ。すなわちドル基軸通貨制の前提が、この時点で崩れたことになる。Kan Nishida氏がツイッターに、この軍事協定とその後の国際的動向を簡潔にまとめている。

Kan Nishida氏はIT企業のCEOで、ツイッターでは新型コロナウイルスや国際経済動向について発信している。Nishida氏はサウジアラビアとロシアの軍事協定を発端とするドル基軸通貨制崩壊過程をBRICS(ブラジル、B:ロシア、R;中国、C;南アフリカ、S)の立場から解説している。ゾルタン・ポズサーのロシアと欧米の関係を軸とした解説を補完したものになっている。Nishida氏は、このスレッドでペトロドラーシステムの歴史的経緯について説明した後、BRICSの現状について紹介している。ひとつは南北輸送回廊(International North–South Transport Corridor/INSTC)で、インドのムンバイとロシアのモスクワを船や鉄道、道路で結ぶ全長7200kmの複合輸送網である。 基本経路はインド⇔イラン⇔アゼルバイジャン⇔ロシアでインドとロシアを結ぶ。2022年7月にイランが合意により完成し、ロシアはインドへの物資輸送を開始している。

南北輸送回廊(International North–South Transport Corridor/INSTC)。INSTC、赤線;従来の経路、青線。ウィキペディアより。

そしてBRICS諸国は自分たちの基軸通貨システムの協議に入っている。中国とロシアは国境を接しており、南北輸送回廊と新しい基軸通貨システムができれば、全く西側を介することがない、完全に独立した経済圏が出来上がる。サウジアラビアやトルコなどの国もBRICSの経済圏へ入る意向を示している。markets.businessinsider.com

 

似た解説を横森一輝氏も、彼のYouTubeチャンネル「経済クラブ」で行っている。

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横森一輝氏は元シンガポールのファンドマネージャーで、グローバリストと仕事をしてきた経験から、国際経済フォーラムに代表される「支配層」(横森氏は「プロレス団体」と呼んでいる)の視点で国際経済を解説している。BRICSの台頭については、グローバリスト(欧米側)とナショナリスト(BRICS側)の対立という視点で解説しているが、骨子はNishida氏の解説と同じだ。Nishida氏は普通の起業家なので、全く立場の異なる二人だが、観察内容は同じである。

 

さてBRICSの台頭をそのままアングロサクソンが放置するとは考えにくい。歴史的に見て大きな社会構造の変革は英国と米国から起こっているので、米国が何らかの先手を打ってくるだろう。米国が金あるいはコモディティに裏付けされた通貨に切り替えてくるのではないか。ただしバイデン政権とFRBでは難しそうなので、政権交代が必要だろう。

良いのか悪いのかはわからないが、日本は世界の僻地で、これらの世界の潮流とは離れてマイペースのようにみえる。