精密医療電脳書

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血中遊離DNAの断片長分布から乳癌術前化学療法の奏功性を予測する

腫瘍由来の遊離DNA(cell-free DNA, cfDNA)は、正常細胞由来の遊離DNAよりも断片長が短い傾向がある。血中腫瘍DNA(circulating tumor DNA)、すなわち腫瘍由来の遊離DNAは、一般的に腫瘍特異的変異を指標に検出するが、cfDNAの断片長を利用できるかもしれない。すなわちthe integrity of cfDNA (cfDI) indexというcfDNAの断片長の分布を示す指標を診断に用いるわけである。

 

Cirmenaらは、アントラサイクリン/タキサンベースの乳癌術前化学療法の奏功性予測を試みた。腫瘍縮小効果の判定にはMRIを用いるが、MRIによる臨床的完全奏功(clinical complete response, cPR)は病理学的完全奏功(pathological complete response, pCR)と一致しないことがしばしばある。そこで、cfDIインデックスの診断能を評価した。

cfDIインデックス = (321-1000 bpのcfDNA量) / (150-220 bp のcfDNA量) である。断片長の測定にはアジレント・テクノロジーのTapeStation 2200を用いた。これは核酸の品質管理用高速電気泳動装置である。

採血は化学療法開始前と終了直後に行い、終了直後の検体のcfDIインデックスを解析に用いた。対象患者52人の中で38人からデータ採取成功した。最適閾値を設定した場合、pCRとの合致率、感度、特異度はそれぞれ81.6%、81.8%、81.5%であった。bootstraped logistic regressionを用いてMRIと組み合わせたシステムを組んだ場合、pCR陽性判定の予測精度は87.5%、pCR陰性判定の予測精度は97.4%であった。MRIのみの予測精度は80%程度なので、かなりの改善が認められる。MRI後センチネルリンパ節生検を行うが、MRIとcfDIインデックス併用でpCRの合致度が上昇するとセンチネルリンパ節生検が省略可能になるかもしれない。

解析技術の立場からすると、cfDNAの遺伝子変異検出は遺伝子解析技術の中でもかなり高度な部類に属するが、TapeStation 2200はローテクである。このような単純な技術の可能性にも常に留意しておく必要があるだろう。

 

文献

Crimensa, G., Ferrado,L., Ravera, F. et al. Plasma Cell-Free DNA Integrity Assessed by Automated Electrophoresis Predicts the Achievement of Pathologic Complete Response to Neoadjuvant Chemotherapy in Patients With Breast Cancer. Precision Oncology, 2022. DOI: 10.1200/PO.21. 00198