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ロシア・ウクライナ侵攻:対立の構図 〜 ロシア・プーチン政権 vs 米国ネオコンとそのスポンサー

ロシアのウクライナ侵攻には、政治・軍事と経済の2つの戦線があり、経済戦線の趨勢は市民生活に直接影響を与える。この戦争で対峙しているのは誰だろうか? ロシア側はプーチン政権だが、政治・軍事の戦線で対峙するのは、ウクライナ政府ではなく米国政府、正確には新保守主義の政治家と官僚だ。新保守主義 neoconservatism (通称ネオコン)は、「自由主義や民主主義を重視してアメリカの国益や実益よりも思想と理想を優先し、武力介入も辞さない思想」(ウィキペディア)である。ソ連崩壊後、ネオコンは、プーチン政権の打倒とロシアの民主化を目指して、NATOの東方拡大を続けた。2014年のウクライナの政変(マイダン革命と呼ばれる)には、CIAと米国国務省が積極的に関与し、政権転覆のため5000億円もの資金が革命側に使われた。この計画のリーダーは米国国務省のビクトリア・ヌーランド Victoria Nurland で、新しくできた親米派のポロシェンコ政権の人事は実質彼女が行っている。親米派政権(傀儡政権といったほうが良い)のもとでNATO及び米軍による国家警備隊とウクライナ軍の強化が行われた。また、ウクライナ語を公用語として、ロシア語話者を差別する政策が公然と行われ、東部地区(ドンパス地区)でのロシア語話者の迫害に至っている。これは侵攻の直接原因の一つである。

 

ブッシュ・シニア政権からオバマ政権まで、対外政策はネオコンが行ってきた。トランプ政権はネオコン主導ではなかったが、バイデン政権は再び対外政策はネオコン主導になった、、国務省のトップは、アンソニー・ブリンケン国務長官とビクトリア・ヌーランド国務次官で、ふたりとも対ロシア強硬派だ。アンソニー・ブリンケンは、父がウクライナ系ユダヤ人、母がハンガリー系ユダヤ人、ビクトリア・ヌーランドは祖父がウクライナ系ユダヤ人で、家族が受けた迫害の歴史が二人のロシア観を形作った、と思われる。

 

米国では政治献金は無制限なので、その寄付者が政策に大きく関与する。約150ファミリーの超富裕層の政治献金がほとんどを占めており、彼ら「スポンサー」が米国政治に介入する。「スポンサー」は現在のグローバル経済で大きな利益を得てきた人々で、国際金融資本はその重要な一員で、その意向に沿って米国政治が行われる。政治家は「スポンサー」の意向を無視できないのだ。ゼネコンが多くの戦争を起こしてきたが、国際金融資本の意向が明確な例は、ブッシュ・ジュニア政権のイラク戦争だ。

1970年代のニクソン・ショック以降、原油はドル建てで取引されるようになった。つまりドルが原油を手に入れるための引換券でなり、米国以外の国は自国通貨でこの引換券を購入しなければならない。したがって原油取引に際して米国、さらにはドルを発行しているFRBが、そしてFRBを実質支配している国際金融資本が儲かる仕組みになっている。イラクのサダム・フセインは自国の原油取引をユーロ建てにしようとして、国際金融資本の逆鱗に触れた。イラク戦争の本当の目的は、この計画の阻止だ、と考えられている(水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」)。イラク戦争は「スポンサー」である国際金融資本のために、ネオコンが行った戦争である。

 

「世界は一部の人々に支配されている」という陰謀論がある:支配しているのはディープステート、カバール、イルミナティなどと呼ばれる人々だが、「スポンサー」は、これらに対応するかもしれない。「スポンサー」がどのような仕組みで意思決定しているのかは、外部からは見えてこない。ただし、一般社会にいろいろな方法で自分たちの計画を発信している。クラウス・シュワブが主催する世界経済フォーラム World Economy Forum (WEF)は代表的な「スポンサー」の広報である。WEFの2022年版「グローバルリスク報告書」で、今後10年間の最も重大なリスクとして、1位に「気候変動対策の対応の失敗」を、2位に「異常気象」を上げている。脱炭素化社会の実現は「スポンサー」の最重要課題になっている。現在のエネルギー政策は「スポンサー」主導で行われている、と言えよう。

 

ネオコンはNATOを東方拡大し、最終的にロシアを解体し民主化することを目的としている。このことは「スポンサー」の利益にもなる。ロシアの石油や天然ガスなどの資産は、エリティン政権のときは西側が支配していたが、プーチン政権になるとどんどんロシア政府の管理下になっていった。ネオコンの計画が成功すれば、再びロシアの資産は西側のものになる。

しかし計画は成功することもあれば、失敗することもある。西側のエネルギー政策の基本は、脱炭素化社会の実現のための二酸化炭素排出量削減で、化石燃料については、石油と石炭の減少、二酸化炭素排出量が最も少ない天然ガスの増加だ。ロシア産の天然ガスが安価なため、EUが使用する天然ガスの45%はロシアからの輸入となっている。このエネルギー政策はもちろん「スポンサー」の承認を得て(多分国際金融資本主導で)行われているが、単一のソースへの依存はリスクが大きい。トランプ前大統領は、この点を理解していてロシアから調達量は減らすべきだ、とメルケル前首相に指摘していた。

 

EUのエネルギー政策は、天然ガスのロシア依存のリスクを無視していたため、ウクライナ侵攻で大混乱に陥っている。またネオコンの政策も西側経済に大きな打撃を与えている。戦争開始により、グローバル経済全体は終了した。また、ネオコンの経済制裁のためドル基軸通貨制も壊れてきている(この点については「ロシア・ウクライナ侵攻の目的:生物兵器と国際金融経済システムの破壊 国際金融経済システムの破壊」で述べた)。ネオコンはウクライナ侵攻を単に政治・軍事の問題と捉え、経済への影響を綿密に分析していないようだ。一方プーチンは経済面までひっくるめて戦争を計画している。天然ガスのルーブル建てによる支払いを要求するなど、軍事と平行させて経済面での対抗処置を行っている。ロシア経済のGDPは韓国なみで、ドル中心の国際金融システムのもとでは経済的に弱い。しかし国際金融経済システムが傾いてくると、資源を使って経済戦争を行えば負けることはない、ということなのだろう。一方、ネオコンと「スポンサー」には、軍事と経済両面を統合して戦略を練っているわけでなく、そのため現在の苦境をまねいたのだろう、と思われる。米国に圧倒的な経済力が残っていれば、この苦境を脱出できるだろうが、今の米国にはなさそうだ。

 

追記)欧州の脱炭素政策がEUの苦境を招いた経緯を詳しく解説している。

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