精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 肺がん ウイルス 人類観察

肺がんコンパクトパネル 〜 プレプリント・アップロード

肺がんコンパクトパネルの論文をプレプリント・サーバー medRxiv へアップロードしました。

 

追記:2021年10月28日に厚生労働省へ製造販売承認申請しました。

 

Analytical performance of a highly sensitive system to detect gene variants using next-generation sequencing for lung cancer companion diagnostics

Kikuya Kato, Jiro Okami, Harumi Nakamura, Keiichiro Honma, Yoshiharu Sato, Seiji Nakamura, Yoji Kukita, Shuichi Nakatsuka, Masahiko Higashiyama

DOI: https://doi.org/10.1101/2021.10.13.21264976

 

次世代シークエンサーを用いた肺がんコンパニオン診断のための高感度遺伝子異常検出システム:肺がんコンパクトパネルの分析性能

加藤菊也、中村誠二、久木田洋児(奈良先端科学技術大学院大学疾患ゲノム医学)、岡見次郎、東山聖彦(大阪国際がんセンター呼吸器外科)、中村ハルミ(大阪国際がんセンター研究所病理ゲノムユニット)、中塚修一、本間圭一郎(大阪国際がんセンター病理細胞診断科)

 

論文要旨

コンパニオン診断は、遺伝子情報による分子標的薬の奏功性を予測する診断法であるが、進行性非小細胞肺がんの治療に必須である。近年、分子標的薬と標的遺伝子が増加しているため、多数の遺伝子診断を一度に行いたい、という強い要望が現れてきた。このような診断では次世代シークエンサーの配列解析が理想的である(NGSパネル)。しかしながら既存のNGSパネルは高い腫瘍細胞含有率が必要で、そのためかなりの検体が検査不能になる。私達はあらゆる検体、検体種に対応するために、新しい肺がん用NGSパネル、コンパクトパネル、を開発した。最大の特徴は高感度の変異検出能で、検出限界は、EGFRエクソン19欠失 0.14%、L848R 0.20%、T790M 0.48%、BRAF V600E 0.24%、KRAS G12C 0.20%である。融合遺伝子については腫瘍細胞含有率1%で検出可能である。既承認診断薬との陽性及び陰性一致率は以下の通りである:EGFR 陽性一致率, 100.0 (95% confidence interval 95.5-100); EGFR 陰性一致率, 90.9 (82.2-96.3); ALK 陽性一致率, 96.7 (83.8-99.9); ALK 陰性一致率, 98.4 (97.2-99.2); ROS1 陽性一致率, 100 (66.4-100); ROS1 陰性一致率, 99.0 (97.1-99.2); MET 陽性一致率, 98.0 (89.0-100); MET 陰性一致率 100 (92.8-100)。EGFR 陰性不一致例はすべて既承認薬の誤りであった。これらの分析性能は、日常臨床で採取される様々な検体に対応可能で、現在行われている腫瘍細胞含有率の精査は不要であることを示している。

 

解説

既存の多遺伝子対応NGSパネル(オンコマイン Dx Target Test マルチ CDx システム)は、検体内に腫瘍細胞が多く含まれていないと(20%以上)検査できない。このため、かなりの検体が検査できないだけでなく、腫瘍細胞含有率の精査が必要なため病理の負担が増大する。この問題はNGSパネルの感度を上げるだけで簡単に解決できる。肺がんコンパクトパネルの最も大きな特徴は、変異の高感度検出能である。感度試験によるコンパクトパネルの検出可能変異率はすべての変異で1%だが、オンコマイン Dx Target Test マルチ CDx システムでは6−13%、コバス EGFR 変異検出キット v2.0では1.26−6.61%であった(FDA Summary of Safety and Effectiveness Dataによる)。コンパクトパネルはオンコマインの6分の1以下の変異率でも検出できるため、単純計算で必要腫瘍細胞含有率は3.3%以下となり、腫瘍細胞含有率の確認は不要である。現在のコンパクトパネルの構成は次のとおりである。

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コンパクトパネルの構成

ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed, paraffin embedded, FFPE)は病理組織の標準的処理方法であるが、遺伝子解析の観点からすると最適な検体とは言えない。核酸を損傷する可能性があり、そもそも不要なのだ。ただしFFPE処理しなければ凍結しないと核酸が分解するため、医療現場では未処理検体の取り扱いは難しかった。この問題を解決するために、私達は合同会社ジーンメトリックスとGM管(ジーンメトリックス核酸保存液封入容器 - 仮称)を開発してきた。GM管には硫酸アンモニウム水溶液が封入されており、この中に検体を浸せば数日間室温で核酸分解なく保存可能である。鉗子洗浄による肺がん検体の回収や細胞診検体の保存等いろいろな応用があるだろう。