自宅でクラシック音楽を再生するシステムとして、タイムドメイン・スピーカーYoshii9を中心とするシステムを構築している。このシステムは比較的安価に中小規模コンサートホールやライブハウスの音楽を、聴覚的にほぼ完璧に再現できる。
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本稿ではこのシステムの補完事項について紹介する。現在オーディオは文化として死滅しつつあるが、同様の試みを行っている人には参考になるだろう。
TuneUp
タイムドメイン社は通常品の音質を特殊素材を用いて改善するTuneUpというサービスを行っている。現在使用しているYoshii9とTimedomain LightはどちらもTuneUpを施したものである。TuneUpではYoshii9,Lightともに明確な改善がある。Yoshii9の場合、通常品はオペラまでは使えるが、オーケストラには使えないが、TuneUpではオーケストラでも使える。オーケストラのように音源が多い場合は、流石にYoshii9でも再現は困難ということだろう。オペラの場合は、聞き手の注意が歌手に集中するため、オーケストラの再現の不備が気にならない、と推定している。Light通常品は低音は難しく、またピアノの再生にも使えない。しかしTuneUpを施すと、チェロ独奏にも使えるし、ピアノについては演奏家の音色を判別する事ができるほど再生能力があがる。ポリーニ、ミケランジェリ、リヒテル等音色が独特な演奏家の録音は判別可能だ。
なお、現在スピーカーユニットの製造停止によりオリジナルのYoshii9の新製品はなく、かわりにMark IIが販売されている。タイムドメインラボによると、Mark IIとYoshii9通常品に性能差はないが、工程が複雑になるためMark IIのTuneUpはできない、ということである。タイムドメイン・スピーカーの中で、音質はオリジナルYoshii9 TuneUp が最高なので、大切に使ってください、ということだった。
Ripping / DA conversion
極初期の頃、タイムドメイン・スピーカーの発明者である由井氏はポータブルのCDプレイヤーを推薦されていた。アップルの携帯プレイヤーが市販されてからは、アップルのDAコンバータの性能がよい、ということで、iphoneが推薦になった。
CDのデータは、AIFFあるいはApple losslessでリッピングを行い、ハードディスクとSSDに保存している。器楽(245.03GB)、オペラ(197.63GB)、60年代カラヤンなどのボックスセット(64.44GB)の3つのライブリで管理している。
以前はipodのDAコンバータを用いるために、聴きたい曲のデータを一旦ipodへ転送後ipodの来アウトでyoshii9のアンプへアナログ出力を行っていた。2022年以降はMacbook Air (M1 chip) のヘッドフォンジャックからyoshii9のアンプへアナログ出力を行っている。2023年からはAudirvāna originを使って処理したアナログ出力を用いている。Audirvāna originの技術の詳細は不明だが、「再生中のプロセッサアクティビティを最小限に抑え、オーディオ出力に向けて最短のソフトウェアパスを使用することで、コンピューターによる音楽の出力を優先させる」ということで、出力系統にコンピュートの他の活動のノイズがはいらない。効果は明確に感じることもあれば、そうでないこともあるが、自然にAudirvāna を通す出力を選んでしまうので、Mac標準のDA conversionよりは高性能だ、と思われる。なお、LightではMac miniのヘッドフォンジャックからのアナログ出力を用いている。Audirvāna を使うメリットはない(音はかわらない)。
吸音材
Yoshii9を設置している部屋は和室で、畳はフローリングと比較すると3倍の吸音能があるため、リスニングには有利だ。問題点はYoshii9の後ろが左半分は木の扉、右半分は襖で吸音効率が異なる点だ。そのため時々音のバランスが悪くなって、体を動かしてリスニングポイントを調節する必要がある。最近吸音材(Yopin 30x30x5cm、6枚)をYoshii9の背後に設置して改善を試みた。室内楽はあまり変化はないが、オペラやオーケストラは大きく変わった。ウォルター・レッグのモノラル録音は完全にスピーカーの中央から聴こえるようになった。カルショウのオペラ録音やオーケストラ録音の定位は著しく改善したので、吸音材の効果は大きい。ただオーケストラの音色が変化することがあり、以前の方が好ましいケースがある。吸音材を外したいとは感じないので、全体的には音色変化を自身の感性は受け入れているようだ。