精密医療電脳書

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新型コロナウイルスに関するメモ(4)~ 超過死亡のシミュレーション分析、ワクチン後心筋炎からのスパイク蛋白検出

最初に前の記事コロナメモ(3)の続き。

超過死亡に関するシミュレーション分析がアゴラに掲載されていた。

agora-web.jp

シミュレーションは現実世界の出来事をいくつかのパラメータで簡略化して示すものであり、一つの仮説を提示したものにすぎないが、この論説は分析結果が事実である、とするような論調になっているため問題だ。論理的に明確な欠陥は「接種から死亡までのプロセスを、コロナ感染から入院、そして死亡のプロセスと同様に確率過程として扱います」とあるが、この仮定が妥当であることが示されていない点だ。したがって分析はなにかを明らかにしているのではなく、一つの仮説の提示にすぎない。

「即死のような短時間での死亡が多く起こるとすると、世界的に報告されているはず」ともあるが、この点も疑問で、ファイザーの第3相試験以来、もともとワクチン接種後2週間は非接種扱いになっているので、この点が死亡報告にどのように影響しているか、調べてからでないと前提条件にはできない。あやふやな前提のもとに行った統計解析、シミュレーション分析はよく見かける。いずれにせよ超過死亡の原因は前向き試験がないと明らかにならないし、倫理的に前向き試験の実施は無理なので答えは出ない。ツイッターで誰かが、厚生労働省は原因はよくわからない、とするだろう、といっていたが、科学的に答えが出ない問題なので仕方がない。

 

最近ツイッターでワクチン後心筋炎の心筋からスパイクタンパク質が見つかったという報告が話題になっている。ワクチン推進派からの反論が一切ない、ということでワクチン反対派からすると決定的証拠、ということである。早速論文を読んでみた。

Kawano, H. et al. Fulminant Myocarditis 24 Days after Coronavirus Disease Messenger Ribonucleic Acid Vaccination. Intern Med 61: 2319-2325, 2022. DOI: 10.2169/internalmedicine.9800-22

ワクチン接種後劇症型心筋炎を発症した女性で、心筋の検体は手術時に採取したものだ。患者は退院している。このような心筋炎の心筋からスパイクタンパク質が検出された症例としては初めて、ということである。心筋検体の報告はこれまで40例しかない。この内の18例と今回の1例、合計19例を調べたところ劇症型は9例だった。報告が非常に少ないことから、1例の報告でもかなり決定的な証拠で、あと2,3例報告があれば、まず間違いなく心筋炎の原因はスパイクタンパク質ということになる。結構重要な論文だ。