精密医療電脳書

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パワー・インフレーション

ゲームをよくプレイするが、据え置き型ゲーム機全盛の時代は、もっぱらゼルダの伝説に熱中していた。スマートフォンのゲームが充実してくると、そちらのほうがどこでもできるので、スマートフォン版のファイナルファンタジーを片端からクリアしてきた。プレイするファイナルファンタジーがなくなった後はアナザーエデンというゲームをプレイしている。ファイナルファンタジーとアナザーエデンは所謂ロールプレイングゲームrole playing game (RPG)に属する。RPGは参加者が各自に割り当てられたキャラクターを操作し、一般にはお互いに協力しあい、架空の状況下にて与えられる試練(冒険、難題、探索、戦闘など)を乗り越えて目的の達成を目指すゲームである(ウィキペディア)。現在のRPGは多数のユーザーが参加するマルティプレーヤーが多いが、ファイナルファンタジーもアナザーエデンも一人用のRPGだ。大きく異なるのは、ファイナルファンタジーシリーズはゲーム買い取り式で、最初に購入すると以降課金は発生しない。それに対しアナザーエデンは、他のソーシャルゲームと同様、ゲーム本体は無料だが、所謂「ガチャ」というくじ引きに課金することでビジネスを成立させている。アナザーエデンは本体のRPGのストーリー以外に、ダンジョンというミニゲームと熟練ユーザー向けの強敵が用意されている。ゲームはキャラクターを用いて進めていくが、無料でゲームについてくるもの(配布キャラ)と「ガチャ」でしか手に入らない有料のキャラクターがある。RPGではゲームをすればするほどキャラクターの能力が向上する。そのためストーリー本体のミニゲームやダンジョンによるキャラクターの強化が作業としては多い。ゲームはうまく調整されていて、ストーリー本体とダンジョンは配布キャラだけでクリアできるが、キャラクターの強化に時間がかかる。また強敵を打ち破ることは非常に困難だ。そのため多くのユーザーはクーポン(アナザーエデンでは「クロノスの石」と命名されている)を買って「ガチャ」を行い、強いキャラクターを手に入れて戦力を強化、ゲームの攻略を楽にしよう、とする。一回のガチャにかかる費用は大体300〜500円で、狙ったキャラクターがでる確率はガチャ1回で大体1%である。従って10回(3−5千円)で約10%、70回(2−3.5万円)で約50%、ほぼ確実に(95%)入手するためには250回(7.5−12.5万円)になる。現在スマートフォンのゲームは買い取り式よりも「ガチャ」方式なのでこちらのほうが遥かに利益がでるのだろう。もちろん無課金ユーザーが集まらないとビジネスが成立しないので、無課金ユーザーの救済措置もある:4,5日で1回ガチャができるるようにクーポンが無料配布されている;またダンジョンを着実にこなしていれば大体半年位で欲しいキャラクターが手に入る仕様になっている(もちろん確率なのでいつまでも手に入らないこともある)。なお、私は1周年キャンペーンでヒーラーを2800円で買っただけで以降1円も使っていない。だが、救済措置で必要な戦力は手に入っている。

アナザーエデンは今年4周年を越えているが、新しく登場するキャラクターの傾向は大きく3つの時期に分けられる。第一期はストーリーやダンジョンをクリアするために便利ないろいろな特性を持ったキャラクターを配布していた時期である。この頃はキャラクターの総数が少なく、新しいキャラクターは独自の攻撃能力、防御能力、治癒力を持ちゲームの攻略を容易にした。キャラクターのバラエティの増大が基本だった。第二期はそれぞれの特性が以前のキャラクターよりも強化された時期、バラエティの増大ではなく能力の強化により購買意欲を維持した時期、すなわちパワー・インフレーションの時期である。より攻撃力、防御力の強いキャラクターがどんどん登場したが、問題点はその能力に対応した強敵がいないことであった。このままの状況では、いずれユーザーに飽きられてしまう。

もちろん制作会社は対策を施していた。一つはゲームのルールの複雑化である。初期のゲームにいくつか新しい要素を加えてゲームを複雑にした。そして最新のキャラクターでも攻略困難な強敵を作り出したのである。ゲームが複雑化したため、新しい強敵はただ強いというだけでなく、攻略するために複雑な戦略が必要になった。すなわち難問になったわけだ。現在は第三期で、難問攻略を簡略化する性能を持ったキャラクターが登場している。強敵を作っておいて攻略できない人は、有料キャラクターを買ってください、というビジネス戦略だ。依然パワー・インフレーションは続いているが、現在のアナザーエデンのゲームルールは十分複雑なので、あと2,3年は購買意欲をそそるキャラクターを作り出せるだろう。このように「ガチャ」ゲームでは、以前のキャラクターよりも劣ったキャラクターでは購買意欲を刺激できないので、パワー・インフレーションは不可避である。パワー・インフレーションが限界となりゲームが陳腐化すると終了、ということになるのだろう。

パワー・インフレーションはコミックでもよく見られる。代表例がドラゴンボールだ。ドラゴンボールでは強敵を倒すことによって主人公が成長するという設定になっているため、強敵を倒すたびごとに、より強い敵が登場する。最初天下一武道会というローカルな大会が舞台だったが、舞台が宇宙になるまでさほど時間はかからなかった。

これに対し北斗の拳の場合は、ケンシロウは北斗神拳の伝承者で、もともと完成した拳闘家であるため、ドラゴンボールの成長という設定はない。そのためか、最強のラストボスはラオウで、ラオウ打倒後現れる敵もラオウよりは弱い設定になっていた。

別の方法でパワー・インフレーションを回避している例はハンターハンターだ。ハンターハンターでは、主人公ゴン以外に複数の準主人公がいて、それぞれの準主人公がラストボスとの対戦を終えると、以降強敵との対戦をしなくなる。すなわち主人公以外の主要キャラクターを設けることによりラストボスを増やし、個々のキャラクターのパワー・インフレーションを回避している。コミックの場合は、キャラクターが商品というわけではないので、設定次第でパワー・インフレーションを回避できるようだ。