精密医療電脳書

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第61回日本肺癌学会学術集会関連情報 〜 肺がんコンパクトパネル、GM管

下記演題の関連情報を掲載します。

 

一般演題(口演)4「生物学 / 基礎 / トランスレーショナル研究4」

肺癌用高感度遺伝子検査パネル開発の現状

加藤菊也 奈良先端科学技術大学院大学、バイオサイエンス領域

岡見次郎 大阪国際がんセンター、呼吸器外科

東山聖彦 市立東大阪医療センター

中村ハルミ 大阪国際がんセンター、病理・細胞診断科

 

イブニングセミナー2

肺がんコンパクトパネル

加藤 菊也 奈良先端科学技術大学院大学 

NGS遺伝子パネル解析による肺がん個別化精密医療に向けた取り組み-細胞診検体を利用したコンパクトパネル検査の実装に向けて-

森川 慶 聖マリアンナ医科大学、呼吸器内科 

 

肺がんコンパクトパネル

現状分析

ファウンデーション・メディシン社の「FoundationOne CDx」は、同社の治験付随研究(バイオマーカー探索)用のシステムが基になっている。サーモフィッシャー社の「オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム」は、自社の次世代シークエンサー専用製品として開発された研究用のパネル(注1)が基になっている。両者とも研究用に採取された検体を前提として開発されており、診断用途を目標に開発されたわけではない。現在肺がん臨床で用いられている「オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム」には腫瘍細胞含有率の制限があるが、これは実臨床での検体の多様性を想定して開発されていないためである。

実臨床検体のための次世代シークエンサーを用いた診断システムの開発は重要だが、米国の医療文化から鑑みて米国のグループが開発を行う可能性は低い。そのため自分でつくることにした。パネル自体は完成しており、変異アレル率1%でも検出可能であることを確認している。

参考:

precision-medicine.jp

 

設計

腫瘍細胞含有率の問題は、診断システムの感度を上げれば解決する。ただしそのためには対象遺伝子を減らす必要がある。

変異検出(DNAを用いる):次世代シークエンサーのリード数を増やせば感度が上昇する。対象遺伝子数を減らして遺伝子あたりのリード数を増やす。オンコマインは1遺伝子あたり約700リードだが、コンパクトパネルでは約5000リード読んでいる。

融合遺伝子(RNAを用いる):鋳型RNAをRT-PCRで増幅するときの遺伝子数を減らせば、各遺伝子の増幅効率が上昇、結果的に感度が上がる。一つの反応チューブで2遺伝子のみ増幅する。

遺伝子数を減らしたために、収載されていない遺伝子が将来コンパニオン診断に必要になる可能性が残る。この問題に対応するためモデュール方式を考案した。承認薬がある遺伝子は診断モデュールに収載し、数年内に承認薬が上市されそうな遺伝子は研究モデュールに収載する。新しい薬剤が現れたタイミングで研究モデュールの遺伝子の承認を取れば良い。パネルに収載されていない遺伝子が必要になった場合はモデュールを追加すれば良い。現在開発中の肺がんコンパクトパネルは、DNA診断モデュールと2つのRNA診断モデュール、そして研究モデュールから構成されている(図1)。パネル自体は完成していて、変異アレル率1%でも検出できることを確認している。

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図1.肺がんコンパクトパネル。

 

GM管(ジーンメトリックス核酸保存液封入容器 - 仮称)

ホルマリンはDNAを傷害するため、遺伝子検査についてはFFPEよりも細胞診検体の方が優れた検体である。ただ細胞診検体は細胞を遠沈して回収、冷凍保存する必要があり、施設によっては難しい。高濃度硫酸アンモニウム水溶液(注2)中でDNA、RNAともに室温で長期保存可能であるため、同水溶液は遺伝子検査用検体の保存に最適である。合同会社ジーンメトリックスで性能試験とプラスチック容器の選定、株式会社DNAチップ研究所でDNA/RNA精製方法の検討を行ってきた(図2)。

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図2.GM管。

肺がんコンパクトパネルとセットで使用することにより、FFPE検体での組織診にかかる時間を短縮できるため、診断プロセス全体のTAT(turn-arround-time)を短縮できる。

 

注1.サーモフィッシャー社の次世代シークエンサーは、自社のパネルを使ったときに最も性能を発揮する仕様になっている。

注2.高濃度硫酸アンモニウム水溶液はRNAlaterの商品名でいろいろな会社から市販されている。