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新型コロナウイルス 〜 超過死亡の季節変動

新型コロナウイルスの社会に与える影響を判断する確実な指標は超過死亡である。ワクチン接種も超過死亡が減少していなければ、結局効果はなかった、ということになる。日本では超過死亡がないため、米国と英国の状況を調べてみた。2020年と2021年春期の超過死亡は、米国で減少傾向、英国で消失しており、ワクチンを含む対新型コロナウイルス対策が奏功しているか、あるいはウイルス自体が弱毒化している。

 

情報の信頼性

新型コロナウイルスに関しては情報が氾濫しており、相反する情報が錯綜しているために混乱を招いている。これらの情報は大別すると個人や組織の見解と一次情報、すなわち感染率や樹雨消化率等のデータに分けられる。個人発信の見解はそれぞれの人の個人的バイアスが強く、正反対の意見も多数認められる。従って個人発信の見解に関しては、どれが正しくてどれが正しくないか判断するのは難しい。厚生労働省や医学系学会ガイドライン等組織が発信している見解は、複数の人の意見を集約したものなので信頼性が高い。但しマスコミは、各種情報を統合して伝えることには興味はなく、報道方針に合うバイアスのある個人に話させているため個人発信の見解に近い。

他方一次情報であるデータも問題が多い。感染者数はPCR検査数に依存しており検査が少ないと少なくなる。検査数の影響を受ける感染者数や医師の判断が入る重症化率と比べて死亡数は確実な数値だが、死亡数にも問題がある。まず死因に問題がある。例えば、癌を長期に渡って患っており、その結果全身状態が悪くなって肺炎になって死亡したとする。この場合直接の死因は肺炎だが、肺炎罹患は癌のせいなので、癌が間接的な死因である(この場合死因は肺炎と記載する事が多い)。また、新型コロナの場合は、他の病気で死亡してもコロナに感染しているとコロナ関連死として報告することになっている。従って新型コロナが直接死に至らしめた死者数よりも多めに見積もることになる。また、新型コロナウイルスが原因で死亡した人の中には、新型コロナウイルスに感染しなくても別の原因で死亡する人がいる。これらの点から、死亡数ではなくて超過死亡で新型コロナウイルスの影響を評価するのが最も適切だろう。超過死亡(あるいは過少死亡)は実測死亡数と過去のデータから推定した死亡数の差である。超過死亡では、個々のコロナ対策の効果は区別できない。ワクチン、マスク等の感染症対策、行動制限等の現在行われている対コロナ対策全体の効果が反映されているわけであって、例えばワクチンが効果的であったかどうかはわからない。但し、超過死亡が減っていなければワクチンは効果がなかったことになる。

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日本では超過死亡が認められなかったので米国と英国の統計を調べてみた。

 

米国の超過死亡

2021年7月までの死亡数の季節変動を図1に示した。

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図1.死亡数の季節変動(米国)。米国疾病予防センターのホームページ(https://www.cdc.gov/nchs/nvss/vsrr/covid19/excess_deaths.htm)から。オレンジのラインを超えると超過死亡があることになる。

黄緑は新型コロナウイルス以外の死因による週ごとの死亡数、青は新型コロナウイルスによる死亡数、オレンジのラインは超過死亡の判定値で、このラインを超えると統計学的に超過死亡があることになる。赤い十字は判定値を超える週を示している。2020年3月から2021年3月まで超過死亡が認められるが、冬期に多く夏期には少ない。インフルエンザは季節性で冬期に増加するが、新型コロナウイルスの超過死亡も冬期に増加する傾向がある。また2020年3月から12月までは新型コロナウイルス以外の死亡だけでも超過死亡が認められる。2021年の春期は2021年よりも超過死亡は減少傾向にあるが、6月初旬までは超過死亡が認められる。

 

英国の超過死亡

2021年7月までの超過死亡を図2に示した。

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図2.超過死亡数の季節変動(英国)。Public Health Englandより。

2020年6月まで超過死亡がみとめられたが、2020年夏期には消失、しかし秋期から冬期にまた上昇した。2021年3月からは消失しており、明らかに2020年とは異なる。

 

分析

米国と英国とも超過死亡が冬期に多くなる傾向が認められたが、英国では2020年は春期(3−5月)には超過死亡が認められたのに対し、2021年はなかった。米国では2021年春期でも超過死亡は認めらるが、2020年と比較すると減少傾向である。治療法の発展もあるが、対新型コロナウイルス対策としてはワクチンが2020年と2021年では決定的に異なる点であるため、ワクチンが死亡数を減らした可能性が高い。但しウイルスが弱毒化している可能性もある。2021年8月4日現在100人当たりの接種回数はイギリスで125,71回だが、米国は109.63回なので(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/world_progress/)、接種の浸透度で超過死亡減少のペースが遅いと思われる。

このペースで冬期でも超過死亡を抑制できれば、現在の対策(ワクチンを含む)は成功している、と云えよう。

欧米では超過死亡があり、死者数を減らすのが第一の目標であり、その目標は今の所達成できている。さて、日本は超過死亡がなく死者数を減らすという目標はない。その場合何を目標とするのだろうか? 超過死亡の違いを反映して、日本人の平均寿命は過去最高を更新しているのに対し、米国人の平均寿命は平均1.5歳短くなっている。

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