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歌劇 ダフネ Daphne:一幕の牧歌的悲劇 Bukolische Tragödie in einem Aufzug

久しぶりにカール・ベームのシュトラウスを堪能した。

 

ダフネの基本情報

作品82;副題、一幕の牧歌的悲劇 Bucolic tragedy in one act;作詞 ヨーゼフ・グレゴール Joseph Gregor;作曲 リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss:カール/ベーム Karl Böhmに献呈;1983年10月15日ドレスデンのゼンパー・オーパーSemper Oper(旧ドレスデン国立歌劇場)にて初演。

 

あらすじ

日本語の適切なあらすじがなかったので、英語版とドイツ語版ウィキペディアのものを適当に翻訳編集した。

時と場所: 神話の時代、ギリシア、ペネイオス川のほとり。

舞台: 石の川岸、密集したオリーブの木、右側に漁師ペネイオスの家、背景にオリンポス山。

少女ダフネは自然への賛美を歌う。彼女は木や花と同じように日光を愛しているが、人間のロマンスには興味がない。幼なじみのロイキッポスは彼女の愛を取り戻すことができない。母親ガイアの要求にもかかわらず、彼女は来たるディオニュソスの祭りのための儀式用衣装を着ることを拒否し、そのドレスをロイキッポスに渡す。

ダフネの父ペネイオスは、神々がすぐに人間に戻ってくると確信していると友人たちに話す。彼は、アポロを迎えるためのごちそうを準備することを勧めている。その時、謎の羊飼い(実はアポロ)が現れる。ペネイオスは、この訪問者の世話をするようダフネに頼む。

謎の羊飼いはダフネに、馬車から彼女を見ていたことを伝え、以前に彼女が歌った賛美歌から自然へのフレーズを繰り返す。彼は彼女に太陽から離れることはないと約束し、彼女は彼の抱擁を受け入れる。しかし、彼が愛について話し始めると、彼女は恐ろしくなって逃げ出す。

ディオニュソスの祭りで、ロイキッポスはダフネのドレスを着た女性の中にいて、彼女をダンスに誘う。 彼女は彼を女性だと信じて同意するが、謎の羊飼いは雷鳴をあげて踊りを止め、彼女はだまされている、と云う。ダフネはロイキッポスも羊飼いも変装していると答えたため、羊飼いは太陽神アポロンであることを明かす。レウキッポスは正体を明かし、ディオニュソス神の名においてダフネの愛を求め、嫉妬深い神にダフネの決闘を挑む。ダフネは二人の求婚者を断り、アポロはレウキッポスに矢を放つ。

ダフネは瀕死のロイキッポスを悼む。アポロはとても悔やんだ。彼はゼウスに、ダフネが愛する木の形で新しい命を与えるように頼む。ダフネは月桂樹に変身し、自然との融合を喜ぶ。

 

感想

カール・ベームの素晴らしい録音は1964年作曲者生誕100年の祝祭週間の公演である。同じ年にカイルベルト指揮の録画があり、YourTubeで見れる。このビデオは多分放送用につくったものだと思うが、結構よくできている。普通のオペラビデオは歌劇場の上演をそのまま撮影しており、もともと劇場空間(3次元)に最適化したものを2次元にしているため、劇場の雰囲気のほとんどが失われる。その点、このビデオは放送用に特別用意したセット・演出のため、歌劇の雰囲気がよく伝わってくるのだ。


www.youtube.com

歌手、演奏者は以下のとおりである。

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シュトラウスの歌劇はエレクトラ、サロメのような大音量のオーケストラをバックにテンションの高い悲劇を展開するものと、薔薇の騎士のように女声の重唱が魅力のものが人気だが、ダフネはどちらでもないためか、あまり上演されない。ドラマは大きな盛り上がりなく淡々と続き、最後のダフネの変身のシーンで終了する。全体的な印象は歌唱付き交響詩という感じで、オーケストラが雄弁で、とくに最後の変身シーンの音楽は結構魅力的だ。ドイツ語版ウェキペディアの著者はシュトラウスの音楽のなかも最も美しいものの一つ、と云っている。エレクトラやサロメなどは音楽もドラマも重いので、時々劇場でみると感動するが、家で聴くと結構疲れる。その点、ダフネは交響詩と同じ感覚で楽しめるので、自宅で聴くにはこちらのほうが良い。

録音と録画で共通のジェームズ・キングとフリッツ・ヴンダーリッヒは当時の代表的ヘルデンテノールとリリックテノールで、ベームの録音では、この二人の掛け合いが堪能できる。ただし録画の方では、ふたりとも容貌がコメディアン風で、群衆の中に美男美女が多く気の毒だ。録音のオーケストラの音色は素晴らしい:ベームのシュトラウスは格別美しい。

ダフネを見るのであれば、やはりベリーニの彫刻がよい。こちらを見ながらシュトラウスの歌劇を聴くのも良いかもしれない。

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ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作「アポロとダフネ」(ウィキペディアより)

 コメント:不思議なことに同じ後期ロマン派のワーグナーになると、ベームの音色は乾いたがさつな感じになる。音色以外は不満はないが、 聴くのが苦痛なので、どうしても他の指揮者の録音を聴くようになってしまう。同じ内容の発言をカルショウもしているので、私の感覚の問題ではないようだ。