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乃木坂46:クラシック音楽ファンの観察

TVのバラエティ番組は殆ど見ないが「乃木坂工事中」は例外で、日曜日の真夜中にいつも見ている。普通の女の子による時間がのんびりと流れていくのが面白い。彼女たちの音楽には興味がなかったが、ある日Youtubeで聴いて素敵な曲が多くてびっくりした。特に気に入っているのが「サヨナラの意味」だ。


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私は日常的にはオペラを中心に聴いているが、ドイツ語かイタリア語で歌っているため、歌詞には注意を払わず音楽のみを聴く。乃木坂46の場合も同じ要領で聴くので、歌詞の内容はわかっていない。彼女たちの歌唱は、クラシックのプロの合唱団とは比べるべくもないが、電子音のパートと合わさると効果的な音楽が出来上がる。特徴的なのは独唱部分で、普通の歌唱では個々の声の個性が出るが、乃木坂の場合ソロ部分の声の個性がなく皆同じ声に聴こえる(あるいは声質が異なる人には歌わせない)。例えば、上記ビデオ2分8秒あたりから「君が好きだけど」を何人かのメンバーが繰り返すが、声の区別はつかない。乃木坂46には女優、モデルとして活躍してるメンバーが多いが、歌手として活躍しているメンバーは知る限り一人で、しかもミュージカル歌手だ。メンバー採用において歌唱力は重視せず、声質が他のメンバーと異なる人は採用していないようだ。

やはり乃木坂46の魅力はダンスパーフォーマンスだ。クラシックバレエや宝塚歌劇の場合、主役とその他のグループダンサーは明確に区別されていて、衣装も振り付けも全く異なる。乃木坂の場合は、全員衣装は同じで振り付けも共通だが、前列、中列、後列そして中央周辺と、ポジションで一応ヒエラルキーを作っている。前の方ほどヒエラルキーの高位、同じ列でも中央の方がヒエラルキーが高い。パーフォーマンス中、後列のメンバーも前に出てくるシーンがあり、時間は短いが、後列のメンバーでも目立つ位置に立つことになる。そのため贔屓のメンバーの本来の位置が後列であっても、観客はよく見ることができるのだ。

クラシックバレエの場合は、衣装で主役とグループダンサーが区別されているので、観客の目は常に主役を追うことになる。クラシックバレエは大抵オペラハウスでの上演を想定して、特に最上席である2階の観客のために振り付けがなされている。2階からは舞台全体が見渡せるため、振り付けの自由度は高い。これに対し乃木坂46のようなスタジアムでのコンサートでは、上の動画のように大部分の観客はパーフォーマンスを見上げるか、水平に見ることになるため、演出方法は限られる。メンバーは前後、そして左右に入れ替わってすべてのメンバーをできるだけ多くの観客に見せる演出になっている。MVは自由度が高くいろいろな演出が可能だ。たとえば、


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 乃木坂はメンバー間のヒエラルキーはあるものの、全員グループダンサーで原則平等が特徴だ。

女性アイドルには暗黙の年齢制限があり、30歳を越えてアイドルを続けることは難しい。乃木坂の場合は、1期、2期、3期、4期と新しいメンバーの募集を続けており、組織の新陳代謝が行われている。今年になって長年グループの中心だった1期のメンバーが続々と去っていくが、3,4期のメンバーへの継承が円滑に行われている。運営スタッフはアイドルよりも長期間仕事を継続できるので、安定した文化の継承が行われるだろう。30年後現在の関係者がすべていなくなっても、乃木坂46が存在するかもしれない。秋元康はおニャン子クラブ、AKB48など、いろいろな女性アイドルグループを作ってきているが、文化や組織の持続性という点で乃木坂46が最も成功しているのではないか。

 

付録:年末に卒業予定の生田絵梨花のフィンランド民謡は無茶苦茶面白い。


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