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時空間再現装置

21世紀(〜2020年まで)の最大の発明は、iphone等ではなくタイムドメインスピーカーだ、と考えている。スピーカーの範疇を超えた音の再現力があり、時空間再現装置と呼んだほうがよい。

奈良先端科学技術大学院大学に隣接して高山サイエンスプラザという大学関連施設がある。2004年ふらりと訪れたところ、タイムドメイン社というベンチャーがあり、スピーカーをつくっていた。そのスピーカーYoshii9を聞かせてもらったところ仰天した。音が実演と同じ、正確に云えば、音楽による感動(脳の反応)が実演と同じだった。開発者の由井啓之氏によると、普通のスピーカーと異なり、録音からの情報のみを忠実に伝えるスピーカーだ、ということだった。いろいろな録音を聴いたが、今でも記憶に残っているのはガラスが割れる音で、目の前でまさにガラスが割れている感覚があった。市販されているスピーカーの多くは音源の向き不向きがあるが、タイムドメイン社のスピーカーは原音の忠実再生が目標であるため、音楽以外の音(雑音を含む)でも完璧に再現してしまう。

実際に入手したのは2005年になってからだったと思う。英国滞在時平均して10日に一回オペラかコンサートへ通っていたが、帰国後実演にふれる機会が減り、また普通のスピーカーでは、音の質が劣化してしまうため、しだいに音楽を聴かなくなっていた。Yoshii9入手以降は、再び音楽に溢れた生活を送っている。

 

Yoshii9のしくみ

普通のスピーカーの場合録音メディアからの信号による振動以外の振動がスピーカーに伝わり、録音メディアの信号による振動が歪められてしまう。有害な振動としては、筐体から伝わる二次振動、筐体からの反射音による振動がある。Yoshii9は金属製の筒の上部にスピーカーユニットが載せられており、筒とはゲル状の物質でつながっている。またスピーカーユニットには重い錘が固定されている。スピーカーユニット&錘複合体の質量が大きいため外部からの振動があってもスピーカーユニットは動かない。またスピーカーから後方へ発せられる音は筒の下部から外部へ抜けてしまうため、反射音の問題も発生しない。このようにYoshii9は巧妙な工夫により、物理的方法で録音メディアの信号以外の振動の除去に成功している。以上は私の理解であり、間違っているかもしれない。

 

使用方法

由井啓之氏の推奨する方法で聴いているが、初期の頃は携帯用CDプレーヤーがよい、ということであった。その後アップル社のDAコンバータが優れていることからiphoneを強く推薦されるようになり、現在の私の再生方法は、そのときの情報に基づいている。現在の由井氏の再生方法についてはフォローしていない。mp3等の圧縮音源は情報の損失があるとのことだったので、ソフトをアップルロスレスに変換しハードディスクに保存している。Yoshii9で聴くためには、ファイルを一旦ipodに転送、ipodをアンプにライン出力で接続して再生している。使っているipodは以下の通り。

ipod第四世代

ipod nano 第四世代、第六世代

ipod touch第五世代、第六世代、第七世代

ipod第四世代はファイル間の再生が不連続であるため、連続した音楽が別ファイルになっているケースには不向きである。ipod nano 第四世代はところどころにノイズが入る。アップル社のドックと500円/30cm程度のケーブルを使ってアンプに接続しているが、ケーブルにはあたりはずれがあるため、いくつか試して良いものを使っている。

Yoshii9の設置に関して。Yoshii9の設計思想から反射音は避けるべきだが、吸音材でも反射音があるということで、由井氏によると開けた窓が理想、ということである。現実的には難しいので、私の場合は使い古しのムシューダ防菌カバーを適当に壁にかけて反射音を調整している。

Yoshii9は優れた再生装置であるが限界はある。私はクラシック音楽の再生に用いているが、室内楽、独奏曲、協奏曲、合唱、オペラには使えるが、交響楽の再生には不十分である。オペラ、協奏曲はオーケストラの演奏も加わるが、独奏あるいは歌手に注意が集中するので、オーケストラ再生の不備が気にならないのだろう、と考えている。交響楽の再生には、メーカーによるYoshii9のチューンナップが必要である。チューンアップされたYoshii9では、オーケストラによっては(たとえばStaatskapelle Dresdenなど)、素晴らしい音が得られる。

なお、現在Yoshii9は販売中止であり、そのかわりにYoshii9 MK IIが販売されている。メーカーによるとチューンアップされたYoshii9が最も優れている、とのことである。

 

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