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ペリフェラル ~接続された未来~ :パラドックスのないタイムトラベル系ドラマ

「 ペリフェラル ~接続された未来~ The Peripheral」は、Amazonプライム・ビデオで配信されているSFドラマだ。原作はウイリアム・ギブソンの小説で、現在のノースカロライナと未来(70年後?)のロンドンが舞台である。タイムトラベル、シミュレーション、アバター、ロボット、クライシス・パニックなど通常のSFドラマの要素を盛り込んだ作品だ。引き込まれて次のエピソードを急いで見ることはなかったが、途中でやめることもなく最後のエピソードまで見ることができた。普通のSFドラマシリーズと言う印象だ。ただしタイムトラベル系の設定にも関わらず、いわゆるタイムパラドックスがない所が興味深かった。

 

世界は次の2つの設定で構築されている。

 

1.2つの世界、現在のノースカロライナと未来のロンドンの間では情報のみが伝達される。

音声による情報交換以外では、ノースカロライナの人は、ゲーム端末用ヘッドセットを使って未来のロンドンのアバター(ペリフェラルと呼ばれる)を操作する。ペリフェラルはヒト型AGIだが、ノースカロライナの人がアクセスすると完全にその人の体として機能する。人の脳の指令のみが未来のロンドンへ転送されるわけだ。逆に未来のロンドンの人は現在の人間(例えば殺し屋)を雇ってノースカロライナの人々に干渉する。この場合は預金情報が転送されることになる。

 

2.2つの世界の相互干渉が始まると、過去の世界は未来の世界とは異なるタイムラインに移行する。

ドラマのロンドンのタイムラインとは異なるタイムラインのノースカロライナへ移行するため、ノースカロライナで起こることは、ドラマのロンドンへは影響しない。そのためタイムパラドックスは発生しない。日本のテレビドラマ「シグナル」の場合は、過去と未来の相互干渉は電話のみで、「ペリフェラル」と同じく情報のみの伝達だが、タイムラインは一つしかない設定なので、過去の変化が未来を改変してしまう:タイムパラドックスが生じ、ストーリーの厳密な整合性がとれなくなるのだ。物語として見ている人には構わないだろうが、論理的整合性が気になる人間にとっては、もうちょっと考えて話を創ってくれ、といいたくなる。「ペリフェラル」の場合物語に矛盾が生じないので、なかなかよい。

 

2つの簡単な設定で、タイムパラドックスのない世界が実現できている。しかし、最後のエピソード後半で、この矛盾なき世界に矛盾を導入するかのような展開になった。シーズン2が準備中ということなので、どのように決着をつけるのか、興味のあるところだ。