精密医療電脳書

分子標的薬 コンパニオン診断 肺がん ウイルス 人類観察

シカゴ、5月29日

本日シカゴへ向けて立つ予定だった。しかし新型コロナのため行けなくなった。

 

医学の世界での最大のイベントのひとつ、米国臨床腫瘍学会年次総会(通称ASCO)は毎年5月末から6月はじめにかけてシカゴのマコーミック・プレイスで開かれる(昨年までは)。世界中から4万人近くの医師・看護師が集まり4日間最新のがん治療の知識を仕入れて、終わったら、さっさっと帰ってまた診療を始める、という学会である。今年は新型コロナウイルスのため中止になり、インターネット上での開催(バーチャルミーティング)になった。私は、娘曰く「ブラックジャックの反対」である。ブラックジャックは医師免許証を持っていない天才外科医だが、私は医師免許証を持っているが患者は診ない医師?(研究者)で、研究のため毎年参加している。日本からも毎年1000人近くの医師が参加、ヨーロッパ各国も同じ位の人数が参加する。ただ学会では米国人の次にイタリア人が多い気がする。彼らは、他の国の人と比べて声が大きく、たくさん喋っているからだと思う。イタリアの医学のレベルは高く、15年位前までは日本に匹敵する医療システムを持っていたが、経済悪化のためどんどん社会保障費が削減され、医療体制が手薄になっていたところに今回のコロナである。社会保障費削減が悲惨な状況になった原因の一つである。ただし日本を含めどの国でも平常時に必要な医療体制は整っているが、それほど余裕があるわけでなく、今回のコロナのように重症患者が急激に増えてキャパシティを超えそうになると、切迫する。日本は落ち着いてよかったが、都市部よりも周辺部のほうが医療は手薄なので、地方へ広がっていたら大変なことになっていた、と思う。

ASCOでは、参加者は学会指定のホテルに泊まり、毎日専用のバスで会場へ行く。学会は午前7時30分から始まり午後6時頃に終了、ホテルへ帰る。その後製薬企業が主催するセミナーがあり、夕食をとりながら聴く。その後寝る。これが4日続く。

マコーミック・プレイスは米国最大のコンベンション・センターで、ASCOは参加者が多いために此処以外の施設で開くことができない。最大の施設でも4万人近く集まると次の写真の様になる。

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これでは4万人全員感染してしまいそうだ。学会を開けるはずがない。

ASCOのもう一つの特徴は多くの製薬企業がスポンサーとして参加していることである。それぞれの製薬企業は大きなブースを出して自社の抗がん剤のPRをしている。

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それぞれのブースではコーヒーやアイスクリームを無料で提供している。これがとてもおいしい。ASCOには年ごとにテーマがあって、がん医療がどの方向へ向かっているのか、肌で感じることができる。バーチャルミーティングではアイスクリームを食べることもできず、学会の雰囲気もわからないだろう。

米国だけでなく日本国内も学会はすべて中止になっている。学会は情報交換の場として重要で、新型コロナウイルスはこういう点でも日本の医療にダメージをあたえている。日本の学会も小規模なもの以外は、バーチャルへ移行すると思う。

明日5月29日からASCOバーチャルミーティングが始まる。シカゴに行った気になれるかどうかわからないが、とにかく電脳空間へダイブするつもりだ。